研究実績の概要 |
本研究では72時間間欠絶食後の長期に及ぶ代謝改善効果の解明のため, ミトコンドリア活性化ならびに脂肪燃焼促進に関与する遺伝子のエピゲノムに着目した検討を行う. 栄養状態による代謝産物の変動がヒストンアセチル化を制御し, 遺伝子発現を変化させることから, 72時間間欠絶食後の臓器における代謝変容をメタボロームにて解析し, 間欠絶食に伴う代謝変容が, 筋肉や脂肪組織のエピゲノムを制御することでミトコンドリアを活性化して脂肪燃焼を促進するとの仮説を検証する. その検討を重ねることで, 間欠絶食による代謝改善の本質を究明し, 臨床応用可能な新規間欠絶食プロトコルの提案を目指す.令和3年度の研究では, 筋力・持久力に与える間欠絶食の効果を検討するため, 野生型マウスに24時間絶食と24時間自由摂食を繰り返す24時間隔日絶食(24hADF)ないしは, 72時間の間欠絶食と96時間の自由摂食を繰り返す 72時間間欠絶食(72hIF)をそれぞれ4週間反復し, その後に筋力・持久力を評価し, また骨格筋を回収して, ミトコンドリア活性化ならびに脂肪燃焼に関与する遺伝子の発現を検討した. マウスに24hADFないし72hIFを4週間反復すると, 24hADFでは筋力・持久力に変化はなかったが, 72hIF後のマウスでは持久力の改善を認めた. 72hIFマウスの骨格筋で, 持久力との相関が知られている脂肪燃焼関連遺伝子の発現を調べたところ, 脱共役タンパクUCP3, 甲状腺ホルモン変換酵素DiO2等の発現亢進を認めた. 回収した骨格筋の電子顕微鏡観察を行うと, 72hIF後のマウスでは, ひとつひとつのミトコンドリアの増大を認めた. このことより72hIFに伴うミトコンドリア関連遺伝子の発現亢進が, 持久力の改善に寄与すると示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスやヒトでいくつかの間欠絶食プロトコルの効果が検討され, 減量ならびに耐糖能改善に間欠絶食が有用である可能性が報告されている. 間欠絶食の効果は全身に及び, 脳, 心臓・血管, 肝臓・膵臓腸管, 脂肪組織, 骨格筋など、全身組織における細胞代謝の変化と, 組織リモデリング・機能改善をもたらす可能性が示されている. そのメカニズムとして低インスリン, 低IGF-1, ケトン体上昇の効果, AMP/ATP, NAD/NADH, AcCoA/CoAの増加などの代謝変化とAMPK, PGC1α, Akt, FOXOなどのシグナル経路の関与が報告されている. これまでの検討で, 72hIF後のマウスでは筋肉のミトコンドリアの増大とミトコンドリア関連遺伝子の発現亢進を認め, 持久力改善に寄与するのに対し, 24hADFではその変化が認められないことを見出しており, 24hADFと72hIFの効果の差を明らかにしたことから, 研究計画がおおむね順調に進展しているものと判断している.
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