ニューロエストロゲンは,受容体である細胞膜結合型ERや小胞体局在GPR30などを介して細胞内シグナルを惹起する可能性がある。これを介して,授乳や仔の匂いの様な外部刺激に対してニューロエストロゲンの生合成やシグナルが即座に応答していると考えられる。そこで本研究ではまず,子育ての行動解析法であるRetrievingを実施してニューロエストロゲンが子育てに対してどの程度影響を与えるのかを検討した。 脳特異的プロモーター下流にヒトアロマターゼcDNAを連結したトランスジーンを持つ神経特異的トランスジェニックマウス(Neu-TG:ニューロエストロゲン過剰),やアロマターゼノックアウト(ArKO)など,一連のモデルマウスを作製し,Retrievingを実施した結果,ニューロエストロゲン高発現マウスでは仔集め行動が増加することや,ArKOでは子育て行動が抑制されることが明らかになった。さらに,培養細胞を用いた検討ではニューロエストロゲンがオキシトシン分泌を促進する傾向もみられ,マウスを用いた検討結果を後押しするものであった。これらのことから,母性形成や養育行動の向上にニューロエストロゲンが深く関与していると考えられる。 今後,養育(神経)シグナルに対する仔からの影響(鳴き声や匂い)といった外部刺激に対する応答メカニズムとニューロエストロゲンの関係を明らかにするため,母獣の脳組織を採取してスライス培養にてニューロエストロゲンの有無がシグナル伝達経路の活性化に与える影響を明らかにする。解析にはRNAseqやメタボローム解析を行う。
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