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2022 年度 実施状況報告書

ネグレクトに対するニューロエストロゲンの作用と分子メカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K17502
研究機関藤田医科大学

研究代表者

林 孝典  藤田医科大学, 医学部, 講師 (40724315)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードエストロゲン / ニューロエストロゲン / 母性
研究実績の概要

厚生労働省の発表によると児童虐待相談件数は年々増加傾向にあり,令和2年度は205,029件,そのうち死亡に至った例は72件(78人)にも及ぶ。虐待やネグレクトは育児で溜まったストレスを子にぶつける母親の怠惰で傲慢な性格に起因するとみなされ,母親の孤立を増長し,さらに次の虐待まねいてしまう。この悪循環をたつため,何らかの手だてを構築することが必要である。
脳(中枢神経)に局在するエストロゲン(ニューロエストロゲン)が養育行動を向上させる事を見出した。そこで,私たちが樹立したニューロエストロゲン過剰分泌あるいは欠損させたモデルマウスを活用し,①養育行動の解析,②養育中枢神経における遺伝子発現解析,③脳組織スライス培養によるex vivo解析 の3つを遂行して,ニューロエストロゲンが養育中枢の発達に与える影響と,その分子機構を解明することを目的としている。
Aromatase KO(ArKO)や脳特異的にAromataseの発現をもどしたBr-ArKO、ニューロエストロゲンを過剰発現させた神経特異的トランスジェニックマウス(Br-TG),逆にニューロエストロゲンのみを欠損させたFlox-Arom,外科的に卵巣切除したOVXを作製した。Br-TG マウスは養育行動が盛んであり,仔の成長率および生存率が高い。これは未交尾の雌マウスでも同様の傾向がみられ,ArKO(ⅴArKO)は養育行動が乏しい一方で,未交尾のBr-ArKO(vBr-ArKO)は野生型と同じ程度の高い養育行動を示した。これらの検討により,ニューロエストロゲンが養育行動を促進することが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

実験に用いるマウスが確保できず、検討が遅れている。現在、繁殖に力を入れているとともに、卵巣切除マウスなどを併用して実験を進めている。

今後の研究の推進方策

現在,以下の実験2つを進めていえる。
1. ニューロエストロゲンが結合する受容体はGq-mERが最も有力である。実際に母性中枢に近い第三脳室にGq-mER特異的なアゴニストであるβ-estradiol 6-(O-carboxy-methyl) oxime bovine serum albumin(BSA-E2)を投与して養育行動の変化を観察する。解析内容はNest building(巣作り), Retrieving(仔集め行動), Licking(仔を舐めて排泄を促す行動)を実施する。BSA-E2の他にもエストロゲンやアロマターゼ阻害薬,GPR30特異的アゴニストについても同様の検討を実施する。
2. エストロゲン受容体の下流シグナルは不明な点が多い。特に神経細胞においての報告は少なく,一部の酵素が関連している可能性を示した報告のみである。これまでの知見をもとにGq-mER陽性細胞をFACSで精製し,網羅的解析と免疫染色を使って下流のシグナルを特定する。
免疫染色:Gq-mERを特異的に染色できる抗体は存在しないため,FITCを結合させたBSA-E2(FITC-BSA-E2)を用いて染色を行う。FITC-BSA-E2が結合した細胞のシグナル伝達経路の活性化状態を確認することで,養育行動を惹起する神経細胞に対してニューロエストロゲンが作用するシグナル伝達経路を明らかにする。免疫染色で確認するシグナルはcFOSおよびCa依存性キナーゼなど種々の因子を予定している。
FACS:FITC-BSA-E2を養育中枢のGq-mER陽性ニューロンに結合させ,FITCを使ってFACSにて分離,回収する。得られた細胞の特性を網羅的解析(RNAseqおよびメタボローム解析)や様々な分子生物学的手法を用いて明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

研究計画が予定より遅れているため、使用した資金が少なくなった。

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公開日: 2023-12-25  

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