研究課題
本研究は骨格筋での代謝変化を転写・転写後制御レベルで包括的に理解することで、骨格筋代謝活性化の新たな制御機構を解明するために行っている。そのために、①運動による代謝変化:運動は骨格代謝が大きく変化すると言われていて、糖代謝から脂質代謝への変化があることも知られている。②外気温による代謝変化:2020年度に計画に加えた4℃にマウスを放置するアッセイ(Cold exposure)。過去に骨格筋の代謝を変化させると報告がある。③高脂肪食投与(食事による代謝変化):食事においても骨格筋代謝は変化すると報告がある。しかし、高脂肪食(HFD)の投与だけでは、遺伝子発現変化が小さいために、代謝異常を有するSfpq(RNA結合タンパク質)の骨格筋特異的KOマウス(Sfpq-KOマウス)へHFDを投与した時のRNA-seqを行った。Sfpq-KOマウスはシビアな筋量減少を引き起こすために、代謝と筋量の解析も視野に入れている。これらの3つのトランスクリプトーム変化を元に解析を行っている。解析は進み、いくつか興味深いと思われる遺伝子をピックアップし、ノックダウン実験を行うためにsiRNAを入手した。また、過剰発現用に発現安定株を容易に作成できるC2C12細胞(Flp in C2C12)の作成をCRISPR-Cas9により行い、過剰発現・ノックダウンを用いた遺伝子の機能解析を行い始めている。このように、筋代謝変化・代謝活性化における重要な遺伝子を同定していくことで、骨格筋代謝を調節する遺伝子発現制御ネットワークの解明につなげていく。
3: やや遅れている
2020年度の緊急事態宣言による遅延の影響からRNA-seqの解析が遅れ、その分、制御因子の同定が遅れていた。2022年度に解析は進み、候補遺伝子のsiRNAを購入し、さらに過剰発現実験の準備を進めたが、当初使用予定だった簡易的に安定発現株が作成できる筋芽細胞であるC2 myoblast(Flp in C2 myoblast)の筋分化能が悪かったためにCRISPR-Cas9 システムにて、安定発現株作成用の筋分化能が良い筋芽細胞C2C12(Flp in C2C12)を作成していたために、遅れが生じている。
いくつかの条件でのRNA-seqの結果を組み合わせて決定した解析対象遺伝子のsiRNAによるノックダウンや過剰発現によるPGC1αを含めた遺伝子発現への影響や筋細胞における代謝変化を解析する。筋代謝を包括的に制御していることが期待できる遺伝子に対しては、さらなる制御標的の解析を行う。
現在までの進捗状況に記載した理由により(COVID-19と新たな解析系の作成)、解析が遅れ、それに伴い使用するはずだった詳細な遺伝子発現解析に必要な費用やプラスミド合成の費用、代謝解析に関する費用が余ったが、2023年度にそれらに対して使用する。また、COIVD-19による影響が長引き、海外出張を控えたが、2023年度は積極的に海外学術集会で発表したい。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Human Genetics
巻: 142 ページ: 59-71
10.1007/s00439-022-02485-2
Translational research
巻: 255 ページ: 26-36
10.1016/j.trsl.2022.11.003