研究課題/領域番号 |
20K17512
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
原 孝行 岡山大学, 大学病院, 助教 (20794340)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | BMP / 副腎皮質 / アルドステロン / コルチゾール / H295R |
研究実績の概要 |
高血圧は最も多い生活習慣病であり、特にメタボリックシンドローム・肥満患者の高血圧にはレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の亢進が関与するとされ、脳心血管合併症予防にその制御が重要である。我々は副腎皮質内にBMPシステムが存在し、BMP-6およびActivinがそれぞれAng II-MAPK・ACTH-cAMP/PKAを介してアルドステロン分泌調節に寄与することを報告してきた。BMP-9は他のBMPと比べ高濃度で循環血液中に存在し、循環因子としての機能が注目され、糖尿病や脂質異常症など生活習慣病との関連が示唆されているが、副腎への作用は明らかになっていない。本研究では副腎皮質におけるBMP-9の役割について検討した。BMP-9はヒトH295R細胞でのコルチゾールおよびアルドステロン基礎分泌には影響を与えなかった。また、高カリウム状態でのホルモン産生には有意な変化がなかったが、一方、BMP-9はAngIIによるコルチゾール分泌に弱い抑制作用を示し、さらにforskolinおよびdibutyryl-cAMPで誘導されるステロイド合成酵素(StAR・CYP11B2、CYP17)のmRNAレベルを減弱し、cAMPを低下させることで、コルチゾールおよびアルドステロン分泌を抑制した。また、副腎皮質での細胞内シグナル伝達としてBMP-9はSmad1/5/8のリン酸化を介することが示された。以上の点より、BMP-9は副腎皮質においてcAMP-PKA経路を抑制することで副腎皮質ステロイド産生を抑制することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ、ほぼ予定通りの研究を進めることができている。しかしながら、初年度の予定項目で遂行できなかった事項については、次年度の計画とともに遂行したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の検討にてBMP-9は副腎皮質においてcAMP-PKA経路を抑制することで副腎皮質ステロイド産生を抑制することが示唆された。次年度は細胞内シグナル阻害実験や細胞内key moleculeのリン酸化の変化や細胞内・外のcAMPレベルの変化等を確認し、その詳細な機序を解明する。さらに、肥満、生活習慣病、メタボリックシンドローム患者における高血圧の原因や病態へのBMPの影響を明らかにし、既存の薬剤のより効果的な使用法や組 み合わせやRA系阻害薬の効果不応例の病態の解明、また既存の薬剤とは異なった機序での 降圧薬の開発への足掛かりとなる可能性を探求する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
設備費の予定であったが、反復実験のため試薬への使用が主体となったため、次年度使用額が発生した。次年度に設備導入を予定しており、また、実験の検証を要するため、今年度の残額を含めて予定通り使用する計画である。 COVID-19の影響で参加予定であった国際学会、国内学会が中止・延期となったため、参加費、旅費が大幅に減少した。次年度以降に参加する予定である。
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