研究実績の概要 |
本研究は、精査および脂肪分布に着目して特発性アルドステロン症(idiopathic hyperaldosteronism; IHA)の再分類を行うことで、多様な病態が混在すると考えられるIHA患者群の病態解明、肥満合併高血圧の病態解明を進め、診療の精緻化を目指すものである。
まず、九州大学病院を含む国内数施設によるIHAを含む副腎疾患レジストリー(Q-AND-Aレジストリー)を構築、大規模にIHAの臨床データ、血液サンプルの収集を可能とする体制を構築した。次に、高血圧患者からIHAを効率的に診断、抽出する方法として、IHAに特徴的なアルドステロン分泌プロファイル (Fukumoto T, Sakamoto R. et al. J Clin Endocrinol Metab. 2021)を明らかにし、日常外来診療で行われる血液検査項目から機械学習を用いてIHAの確率を予測するモデル(Kaneko H, Sakamoto R. et al. Sci Rep.2021)を構築した。
そして、IHA症例での検討において、皮下脂肪量と分泌量が相関する血中レプチン濃度が、女性においてアルドステロン分泌量と相関することを見出した(坂本ら、日本肥満学会. 2021)。すなわち、肥満女性においてレプチン依存性にアルドステロン過剰分泌をきたす「肥満誘導性アルドステロン症」が存在することが示唆された。 減量による可逆性を検討するため、肥満手術による体重減少が得られた症例のサンプル収集を進めている。また、さらなる解析のため、ステロイド代謝経路の包括的評価を可能とするステロイド代謝産物パネルを構築、健常者および副腎腫瘍患者での基礎検討を完了した。
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