2020年度において作成したラットのインスリン分泌細胞株であるINS-1についてVNUT遺伝子の変異導入をCRISPR-Cas9を用いて行ない、シングルセルソーティングを行うことで、変異の導入についてはシークエンスにて確認できたが、明確なインスリン分泌に伴うATP分泌の低下の表現型の細胞株が得られず、またインスリン分泌自体も株により大きく異なり、細胞株間の表現型の違いが大きく、以上を用いてのインスリン分泌への影響は困難であると判断した。また、VNUT欠損マウスと野生型マウスから単離したランゲルハンス島のRNA-seqを施行したところ、GO解析にて表現型であるインスリン分泌亢進と一致するインスリン分泌関連遺伝子の上昇を認めたが、上位に上がってきた項目としては免疫関連のものが中心であった。ランゲルハンス島内にもマクロファージを中心としたマクロファージが存在しており、近年インスリン分泌との関連やβ細胞の増殖との関連が示唆されている。また免疫細胞にもVNUTは発現していることと今回のランゲルハンス島のRNA-seqの結果を合わせて考えると、ランゲルハンス島全体の表現型はマクロファージ に由来する可能性も考慮する必要が出てきた。現在マクロファージの表現型を骨髄由来マクロファージを用いて解析中である。またVNUT欠損マウスでの非アルコール性脂肪肝炎の表現型が改善するとの報告も出ており、こちらについても骨髄移植マウスをNASHモデルに行うことで解析を進める方針としている。
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