我々はGLP-1による膵β細胞増殖制御における新規経路を同定することを目的に、マウス単離膵島にリラグルチド (Lira) を添加し定量的プロテオーム解析を行い、外分泌腺の消化酵素であるAmy1や、膵腺房細胞に発現し膵β細胞へ作用する可能性が報告される分泌因子であるReg1の発現上昇を見出した。単離膵島と腺房細胞の共培養系を確立し、Lira刺激と腺房細胞との共培養により、Reg1、Amy1、P-CadやCx26といった細胞接着因子の発現が、膵島において上昇することを確認した。これより、Liraにより膵島と腺房細胞の接着が促進された結果、腺房細胞由来のReg1の発現が上昇したと考えられた。 Reg1欠損マウス (KO) 単離膵島では、野生型マウス (WT) に比較し、Lira添加時のATF2遺伝子発現が低下した。WT膵島をWT腺房細胞と共培養すると、Liraによる膵β細胞増殖は促進された。一方、WT膵島とKO腺房細胞の共培養では、Liraによる膵β細胞増殖は低下した。また、マウスへのLira皮下注による膵β細胞増殖は、WTに比較しKOで低下した。 以上より、Liraは膵島に作用し、接着分子の発現誘導により膵島と腺房細胞の接着を促進し、腺房細胞由来のReg1の誘導によりATF2を介して、膵β細胞増殖を促進する可能性があり、GLP-1による膵β細胞増殖作用において、膵島と腺房細胞の相互作用による、Reg1を介した新規経路の存在が示唆された。
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