研究課題
若手研究
本研究で我々は、胎盤から分離したヒト羊膜上皮細胞(human amniotic epithelial cells: hAEC)がin vitroで培養を始めると直ちにTGF-β依存性の上皮間葉転換(EMT)を起こすことを示した。また、網羅的トランスクリプトーム解析および細胞表面糖鎖解析等を用いて、TGF-β依存性EMTの阻害によりhAECの多能性が保持されることを初めて報告した。さらに多能性の維持は細胞の非腫瘍形成性に影響を与えず、hAECは臨床応用に適した安全性の高い細胞であることを示した。
再生医療
先天性代謝異常症とは、生まれながらに特定の酵素などが欠損し、生体内の物質代謝障害を来たす疾患群である。時に根本的治療として行われる肝移植の侵襲は大きい。我々はこれに替わる新規治療として、ヒト羊膜上皮細胞を用いた細胞移植治療の開発を目指している。本研究で得られた、細胞の多能性制御に関わる分子機構の知見は、細胞調整プロトコルの最適化に繋がり、将来的には先天性代謝異常症の新規治療開発に寄与するものと考える。