研究課題
コルチゾール産生腺腫(CPA)における腫瘍発生メカニズム解明の為にヒト副腎腫瘍検体を用いたsingle cell analysisの系を立ち上げた。具体的にはCPA及び非機能性腫瘍、アルドステロン産生腺腫の正常副腎組織を用いてsingle cell RNA-sequencing(scRNA-seq)を施行した。新規の知見として、ヒト副腎組織および腫瘍組織には、シングルセルレベルの遺伝子発現プロファイルから約20近くの細胞集団クラスターに分類できることが明らかとなった。特に組織マクロファージや血管内皮細胞、副腎の皮膜細胞、adrenocortical linageの細胞集団である。特に重要なことに、UMAP解析の結果において、ホルモン機能性の観点から、カテコラミン産生能を持つ副腎髄質細胞群に加え、アルドステロン産生細胞と考えられうる群(CYP11B2+)やグルココルチコイド産生細胞と考えられうる群(SF1+, CYP17+, CYP11B1+)といった群を同定した。さらにSF1+だが、CYP17及びCYP11B1 lowである、Progenitorと考えられうる群も認められている。これらの新知見を基に、コルチゾール産生腺腫(CPA)におけるジェノタイプの違いが、どのようなシングルクラスター特性を持つかどうかを明らかにすることが可能となった。さらに、それらの特徴的クラスターを抽出し、そのクラスター間におけるDifferential expressed geneを検討することで、これまでのbulkのRNA-seq解析では捉えることのできなかった新たなパスウェイやGene Ontologyを提示することが可能となり、コルチゾール産生腺腫(CPA)における腫瘍発生メカニズムの解明に資する研究成果につながると思われる。
2: おおむね順調に進展している
上記の通り、ヒトCPAを用いたsc-RNA seqの系を立ち上げた。正常組織だけではなく、腫瘍部分を用いた解析も開始している。解析副腎検体については約30例取得出来ており、うちコルチゾール産生腺腫は約10例である。今後も5-10例/年の追加が見込まれる。
検体を用いたscRNA-seq解析を進め、データを集積させる。これらの検体の中でもCPAは同時にTargeted capture sequencingも行っており、PRKACA/GNAS/CTNNB1のいずれの体細胞変異を持っているか同定を行っている。さらに患者の臨床データも同時に紐づけを行っている。これらのデータを統合し、特に各々の体細胞変異によりscRNA-seq発現パターンで差異があるのかについてのデータ解析を行い、申請者の過去の統合的解析と合わせて論文作成を行う予定である
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