研究実績の概要 |
哺乳類の生殖内分泌システム(H-P-G axis)における下垂体のゴナドトロピン(LH, FSH)分泌は、間脳視床下部のゴナドトロピン分泌刺激ホルモン(GnRH)ニューロンによる律動的な分泌刺激により制御される。不妊の原因で最も高い割合を占める排卵障害には、神経内分泌による続発性性腺機能低下症が最も多い。よって、その原因を探索することは、内分泌学的に重要な課題である。我々はゴナドトロピン分泌制御を解明するため、AU-リッチ領域(AU-rich element; ARE)に結合するRNA結合タンパク(RNA-binding protein; RBP)に着目している。 RNA結合タンパクZFP36は、ゴナドトロープ細胞ではGnRH刺激で発現が増加し、新たに産生されたZFP36がAREを有したmRNAの分解に働くと仮定される。 FLAGタグ付加ZFP36の高発現安定株およびZFP36ノックアウト株LβT2を作製し、ZFP36高発現株では定量RT-PCR法によりGnRHによるゴナドトロピン誘導遺伝子Egr1の発現が抑制され、3’UTRにAREを有するGnrhrの発現は低下した。また、ZFP36のmRNA発現制御を検討するため、Gnrhr, Egr1の3’UTRを有したルシフェラーゼレポータープラスミドを作出した。これらのプラスミド導入により、GnrhrおよびEgr1(そしてZfp36)の3’UTRを有したプラスミドのルシフェラーゼ活性の低下をみとめた。この結果より、ZFP36の発現がGnrhrおよびEgr1のmRNAに直接結合することによりGnrhrおよびEgr1の発現制御を行うことがわかった。 日本内分泌学会 (2021年)、日本神経内分泌学会(2021年:奈良)、米国内分泌学会 (ENDO2022: Atlanta)にて研究の進捗を報告した。
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