研究課題
まず,免疫チェックポイント阻害剤による内分泌的免疫関連副作用(内分泌irAE)の基礎的研究において,in vivoにおける内分泌自己抗原の検討に関しては,甲状腺サイログロブリン蛋白の接種をおこない,我々の確立したHLA-DRトランスジェニックマウスに対する免疫応答を検討した。対象細胞としては、脾臓細胞を用いた.甲状腺抗原に対する免疫細胞の反応性を,BrdUアッセイおよびELISA法を用いて定量化したところ,抗原濃度依存的に,蛍光強度の増強が確認された.また,抗PD-1抗体の追加接種の結果,それらの免疫応答に差異があることを見いだした.現在,遺伝子操作等によって,上記事象の機序について検討を行いつつある.臨床研究においては,当院倫理委員会承認のもと,インフォームドコンセントをえて検体収集を終えつつある.研究成果の一部は,免疫チェックポイント阻害剤による甲状腺障害のサイトカイン動態(Cancer Sci. 2020 May;111(5):1468-1477)および疾患感受性HLAの特徴(Endocr J. 2020 Aug 28;67(8):859-868)として論文化された.
4: 遅れている
in vitroの検討においては,内分泌細胞および免疫細胞共培養系の樹立,さらにはnativeかつ高純度である内分泌蛋白の精製に試行錯誤しているものの,部分的に適正な結果が出つつある.臨床検体を用いた実験においては,これまでのところ,臨床データ,サイトカイン,ケモカイン,HLAタイピングの評価にとどまってはいるが,既知の免疫系細胞刺激物質を用いた生細胞刺激の結果,陽性反応を一部えているため,発展的な免疫アッセイを数種類計画し,各種シグナルの誘導を確認している.
今後、内分泌irAEの基礎的検討に関しては、我々内分泌専門医とともに,がん免疫研究を得意とする研究者へのコンサルティングが望ましいと考えられ,現在交渉中である.臨床研究に関しては,現状の検体でも各種アッセイは可能になりつつあるが,コストの範囲内で研究協力者をえて症例数を増やすことを検討する.さらに,数種類のHLAトランスジェニックマウスを入手するにあたり検討が必要である.今後,内分泌刺激物質を用いパラクリン系における評価系を確立し,細胞内cAMPおよびCa濃度の評価,CFSEラベリングを行い,ex vivoにおける検討等を行なう予定である.
一部の当該年度中に予定していた実験が次年度へ繰り越しになったため.次年度にはマウス飼育代,消耗品費,試薬代を中心として使用する予定である.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件)
Endocrine Journal
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