研究課題/領域番号 |
20K17542
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
稲石 淳 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60724565)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 糖尿病 |
研究実績の概要 |
肥満などのインスリン抵抗性の存在下では、血糖値を正常に保つためにインスリン需要が大きくなる。膵β細胞はこれに対して、代償性に質的、量的に活動を高めて対応するが、長期に及ぶと疲弊し、機能的、或いは量的な破綻を起こすことにより2型糖尿病が発症することが明らかになってきている。一方で、膵癌患者における糖尿病発症に関しての機序、特に膵β細胞量との関わりは不明な部分が多い。大部分の膵癌患者で糖尿病は出現し、癌の臨床症状に先行し数か月~数年以内に現れる。インスリン抵抗性とβ細胞機能不全が膵癌患者で出現すると報告され、膵島血流機能障害、微小血栓症、血管周囲線維症などの複合的な要因が膵癌による糖尿病の発症機序として推察されているが、膵癌と糖尿病の因果関係は充分に解明されていない。現在までに日本人外科手術例での膵摘出標本で検討を行い、非糖尿病・糖尿病例でともに膵癌患者においてそれ以外の症例と比較してβ細胞面積の低下を認めたことを報告した。膵癌患者におけるβ細胞量の低下が示唆されるも、術前の化学療法や手術・膵疾患が組織へ及ぼす影響も否定できなかった。 そこで本研究では、膵癌患者と非膵癌患者の剖検サンプルを用いて、膵癌症例におけるβ・α細胞量などの膵組織学特徴について検討を行う。本研究の成果は、膵癌による糖尿病における膵内分泌細胞の生理的・病的変化を明らかにして、糖尿病の発症予防、根治療法の確立に寄与することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染症などの問題もあり、研究を実施するのが困難な状況もあったため
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今後の研究の推進方策 |
膵癌28症例、非膵疾患33症例に関して剖検時に得られた膵組織から膵切片を作成し、免疫染色後に全膵面積あたりのβ細胞面積、α細胞面積を測定・検討し、その結果に関して第64回日本糖尿病学会で発表予定。β細胞ターンオーバーの評価なども引き続き行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
β細胞の複製やアポトーシスなどの検討が予定通り施行できず、次年度以降に抗体購入費など使用予定。
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