本研究は、血液不適合生体腎移植において、抗CD20抗体であるリツキシマブを使用することで、なぜレシピエントに長期免疫寛容が誘導されるのかを糖鎖に着目して解明することを目的としている。リツキシマブ投与前と術後でCD4T細胞、CD8T細胞および新たに出現するB細胞に表出している糖鎖パターンを比較し、リツキシマブ投与前後での発現の違いを認める糖鎖を網羅的に同定する。 研究を開始し、2020年1月より始まったCOVID-19感染症の流行により生体腎移植そのものを行うことができなくなった。2020年11月には生体腎移植を再開できたもの、2021年夏までは血液不適合移植を行うことができなかったため、対象サンプルの入手が不可能となった。さらに、2022年10月までに集めることができたサンプルが、ディープフリーザーの故障により保存状態不良となってしまい、研究対象サンプルとして不適切と判断された。したがって、新たに2022年11月からサンプルの再入手を行うこととなった。最終的には、血液型適合生体腎移植レシピエント4人と血液型不適合生体腎移植レシピエント4人で、術前および術後6か月のCD4T細胞およびCD8T細胞を確保することができた。この8人に対してCD4T細胞およびCD8T細胞、術前および術後6か月での32サンプルでの解析を行う方針となった。当初の計画では、それぞれの表面糖鎖を網羅的に解析し、術前後で比較する予定であったが、糖鎖解析担当者の異動により、糖鎖での解析が不可能となった。このため、糖鎖に代わり、Coding RNAでの網羅的解析を行う方針に変更し、解析を行うことができた。併せて、血液型不適合患者の術後6か月の血液型抗体価および血液中のT・Bリンパ球百分率も確保することができたため、これらのデータをもとに血液型不適合移植とcoding RNAの関連を比較した。
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