乳癌の罹患数は国内で年間9万人と報告されている。そのうちホルモン受容体陽性・HER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor2)陰性の乳癌(HR(+)HER2(-)乳癌)は7割近くを占め、術後ホルモン療法の施行で予後は概ね良好である。しかし、早期再発や10年以上経過してからの晩期再発もあり、HR(+)HER2(-)乳癌は不均一と考えられる。そこで申請者は、治療の最適化を目指し、ホルモン療法の治療抵抗症例の予測と治療抵抗メカニズムの解明を目的として、術前ホルモン療法の臨床試験の検体と臨床情報を用いて解析を行った。 乳がんの治療の際の免疫系の変化に着目し、パイロットスタディとしてバンキングサンプルを用い、手術前にホルモン治療が行われていた8例について治療前後の免疫関連の各タンパクの発現変化について考察した。オックスフォード大学の共同研究者と意見交換を踏まえ、nCounterを用いて詳細な発現解析を行うこととした。nCounterを用いた詳細な発現解析により、ホルモン療法によるがん組織での免疫系の発現の推移を観察できることがわかった。最終年度は術前ホルモン療法の2臨床試験での付随研究として、nCounterを用いて詳細な発現解析と臨床情報を用い、探索的に解析を行った。今後、学会及び論文にて発表予定である。免疫系の発現の推移から治療抵抗メカニズムが解明できれば、治療前に薬物治療応答性を予測した最適な治療の提供、また治療抵抗性を打破する新規治療法の開発が可能となると考えている。
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