研究実績の概要 |
HLAホモ接合型のドナーから1ハプロタイプを共有するHLAヘテロ接合型レシピエントへの肝移植はDonor dominant one-way HLA matching(DDOM)と呼ばれ肝移植後GVHDのリスクとなる。HLA-A/B/DRの3座でDDOMとなるドナーは除外すべきとされるが、2座のみのDDOMやA/B/C 3座のDDOMでもGVHD発症例はあり、各HLA座との関連を含めその意義は不明である。 今年度は、後方視的臨床研究として、HLA-C/DQ/DP座も含めたDDOMとGVHD発症との相関性について解析した。1990年から2019年までに施行された生体肝移植1,851例のうちHLA型が記録された1,759例を対象に、HLA-A/B/DR 3座のうち1座以上でDDOMを持つ症例を抽出しGVHDとの相関性を解析した。1,759例のうちGVHDを発症したのは4例で、3例がHLA-A/B/DR 3座のDDOMを有し、1例はA/B/C/DP/DQ/DR 全座でmismatchであった。HLA-A/B/DR 3座のうち、1座以上でDDOMを示す例(DDOMを1座持つ症例は残り2座がidentical)は56例あり、HLA-A/B/DR 3座でDDOMを示した6例のうち3例がGVHDを発症した。これら3例のHLA-DP/DQ/DRもまたDDOMであった。HLA-A/B/DRのうち1/2座でのみDDOMを示す50例はいずれもGVHDを発症しなかった。 以上より、HLA-A/B/DR 3座のDDOMがGVHD発症に関連しHLA-C/DQ/DPの関連は小さいことが判明した。しかしA/B/DR 3座のDDOMであってもGVHDを発症しないこと、DDOMと無関係なGVHD発症があることも判明し、新たな発症因子の探索が必要である。引き続き新たな発症因子の探索と動物モデルでの検証を予定している。
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