研究課題/領域番号 |
20K17553
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
谷峰 直樹 広島大学, 病院(医), 助教 (70866516)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アロ反応性T細胞 / 免疫寛容 |
研究実績の概要 |
本研究ではドナー特異的T細胞を詳細に観察する新規免疫モニタリング法により、臨床移植後のドナー特異的低応答におけるT細胞exhaustion機構の意義を解明する。さらにマウスモデル、ヒト細胞培養系を用いて積極的なexhaustion誘導により免疫制御が可能かを検証し、従来法とは全く異なる新規免疫抑制戦略の開発へと展開する。 臨床臓器移植後のドナー特異的低応答機序の解明のため、アロ反応性T細胞検出アッセイを応用し、ヒト末梢血単核球検体でアロ反応性T細胞のexhaustion, memory, 核内転写因子フェノタイプの解析を行った。ランダムアロペアにおけるアロ応答性T細胞にexhaustion関連分子の発現は乏しいことが確認された。 OVA抗原特異的反応系マウスモデルを用いた人為的Exhaustion誘導モデルの開発のため、抗原提示能を増強させるため、B細胞を活性化培養行った。CD40L+IL-4, LPSで活性化させた脾臓由来B細胞フェノタイプを解析し、副刺激分子、HLA分子の増強とともに、PD-L2、Gal-9の表出が増強されないことが確認された。OVAペプチドで感作させた活性化B細胞によるin vitro, in vivo の抗原提示能をCD4+ T細胞がOVA特異的T細胞受容体をもったOTIIマウスで検討した。In vitroリンパ球混合試験(MLR)では活性化B細胞はOVAペプチド感作依存性にOTII由来T細胞の増殖を誘導した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではアロ応答性T細胞Exhaustionに着目した臨床的移植免疫制御機構の解明とそれを応用した新規免疫制御法を開発する。臨床検体解析は解析プラットフォームの一部としてアロ反応性T細胞のExhaustion関連分子、Memory形成関連分子、関連核内転写因子を同時に測定するアッセイ樹立した。反復解析可能なアロ刺激細胞として、移植ドナーからの増殖活性化B細胞ストックの作成に取り組んでいる。 マウスモデルを用いた研究では活性化B細胞のOVA特異的反応マウスモデルを用いたペプチド抗原感作による抗原提示能を検証した。In vitro MLRにおいて活性化B細胞はOTII由来T細胞をOVAペプチド感作依存的に増殖させた。このOVAペプチド抗原提示B細胞をin vivo 移入することにより、T細胞のexhaustion markerの推移やメモリーフェノタイプの変容を解析中である。また、活性化B細胞のフェノタイプ解析により、PD-L2, Gal-9は活性化による表出増強を認めず、遺伝子導入候補となり得ることを確認した。GFP plasmidを用いた活性化B細胞への遺伝子導入を検証し、一定の形質導入結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
臨床サンプルの経時的なアロ反応性T細胞変化を検証するため、反復解析可能な抗原提示細胞を増殖確保する技術を確立する。増殖培養後の分離純度の改善に取り組んでいる。フィーダー細胞を用いない培養手法の開発も同時に検討することで、臨床サンプルのアロ反応性T細胞を経時的に解析する準備を進める。臨床サンプル解析については、より計画された臨床サンプル解析を進めるため、免疫抑制剤の計画的漸減、休薬を行い、免疫寛容誘導を促す臨床試験の実施計画を推進中である。 マウスモデル研究では活性化B細胞の細胞移入によりT細胞免疫が賦活されるか否かを検証する。さらにB細胞に抑制性分子を形質導入することで、B細胞による反復的、持続的な抗原提示およびT細胞抑制シグナルがExhaustion誘導を促すか否かを検討する。以上の研究は当初より研究計画として挙げており、予定通り施行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症による研究室の入退出制限により、ボランティアサンプル、臨床サンプルを用いたヒトサンプル解析が十分に行うことができなかった。該当経費は次年度にヒトサンプル解析を行うための経費とする。
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