研究実績の概要 |
本研究ではドナー特異的T細胞を詳細に観察する新規免疫モニタリング法の移植臨床への応用と、移植後免疫におけるT細胞exhaustion機構の意義の解明を目指した。 B細胞の培養活性化により抗原提示関連分子の発現増強を確認した。活性化B細胞での刺激下に、抗原特異的反応性T細胞の疲弊マーカーの経時的変動を観察することで、活性化B細胞が抗原特異性を維持ながら強力な抗原提示能を示すことを確認した。マウスの移植モデルを用いて、ドナー活性化B細胞刺激を用いた末梢ドナー応答性T細胞モニタリングを最適化し、移植感作後、CD137, CD154マーカーを用いて検出する末梢ドナー応答性T細胞の量的・質的な応答が、拒絶・寛容モデル両者の移植片生着成績を反映することを示した。本アッセイはセルトレーサーを用いた数日を要する増殖試験と比較し、18時間と短時間の培養時間で、かつ詳細な免疫応答を観察することで移植後臨床的免疫モニタリング法としても有用な可能性が示唆される。 ヒトサンプルを用いて、アロ応答性T細胞の検出・分離後にmultiplexシングルセル解析による詳細なフェノタイプを確認する手法を確立した。ランダムアロ応答性T細胞には特徴的な細胞代謝、活性化シグナル経路が同定された。肝移植後の臨床的免疫寛容および免疫抑制下ドナー特異的低応答レシピエントから、同手法を用いてドナー応答性T細胞を分離、シングルセルライブラリーの作成に成功した。移植臨床におけるドナー特異的T細胞応答を解明する大きな足掛かりとなることが期待される。
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