研究課題
短腸症候群および腸管蠕動不全の患児では、長期の完全静脈栄養(TPN)が必要となり、腸管不全関連肝障害(IFALD)に陥る。IFALDは致死的な合併症であり、我々の研究グループはその予防・治療について消化管ホルモンや腸内フローラ、胆汁酸などの観点から、多角的に研究を行ってきた。近年では非アルコール性肝障害などの成人肝疾患における胆汁酸の役割が徐々に解明されており、核内レセプターをターゲットとした治療法が開発されているが、IFALDにおけるその役割は分かっていない。本研究では短腸症候群モデル動物を用いてIFALDにおける胆汁酸の役割を解明し、核内レセプターをターゲットとした新たな治療法を開発することで、従来の我々の研究成果に加えたIFALDに対するMultiple therapyの確立を目的とする。本年はモデル動物の作成を行った。7週齢の雄性SDラットを本研究のモデル動物とし、中心静脈カテーテル留置と大量腸管切除を行い、2週間のTPNを行い、IFALDモデルラットを作成した。2週間のTPNでは、実験プロトコルを完了するまでに主に肝不全で死亡するラットが多かったため、TPN期間の再検討が必要であった。1週間のTPNで生存率が上昇し、IFALDモデルの作成過程で安定した成績を残せた。肝を採取し病理組織学的所見を検討すると、脂肪沈着・炎症細胞の浸潤といったNAFLD型のIFALDの発症が確認できた。一方で、肝組織中のTNFαやIL-6といった炎症性サイトカインの上昇は認められなかった。今後の課題として、病理組織学的所見と、その他の検体での検査結果の解離に関してさらなる解析および評価方法の検討が必要である。
3: やや遅れている
新たに導入したカテーテルや、その他の実験機材によるものと思われるカテーテルトラブル、術後合併症が頻発したために、検体の採取とデータ収集に難航している。
カテーテルの固定方法の見直しや、合併症発生時にも検体採取とデータ収集を行い、解析をする。IFALDの発症機序は多くの因子が複雑に絡んでいると言われているため、合併症発生時のデータ解析も病態解明に近づくと考えられる。
新型コロナ感染症の遷延により、学会への参加の際の旅費が不要になったことが要因として考える。状況に応じての参加、Web等での情報発信をしていく。
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Pediatric Surgery International
巻: 37 ページ: 247~256
10.1007/s00383-020-04802-0
巻: 37 ページ: 411~417
10.1007/s00383-020-04825-7