研究課題
短腸症候群および腸管蠕動不全の患児では、長期の完全静脈栄養(TPN)が必要となり、腸管不全関連肝障害(IFALD)に陥る。IFALDは致死的な合併症であり、我々の研究グループはその予防・治療について消化管ホルモンや腸内フローラ、胆汁酸などの観点から、多角的に研究を行ってきた。近年では非アルコール性肝障害などの成人肝疾患における胆汁酸の役割が徐々に解明されており、核内レセプターをターゲットとした治療法が開発されているが、IFALDにおけるその役割は分かっていない。本研究では短腸症候群モデル動物を用いてIFALDにおける胆汁酸の役割を解明し、核内レセプターをターゲットとした新たな治療法を開発することで、従来の我々の研究成果に加えたIFALDに対するMultiple therapyの確立を目的とする。本年はモデル動物の作成を行った。7週齢の雄性SDラットを使用し大量腸管切除モデルとして80%短腸ラットモデルを作成する。1週間の順化の後、手術を施行する。8週齢のSDラットの小腸長は約90cmであるため、トライツ靭帯より5cm肛側~回腸末端より5cm口側の間の腸管を切除する。手術時に外経静脈のカットダウン法により経静脈栄養ルートを挿入する。2週間のTPNでは、実験プロトコルを完了するまでに主に肝不全で死亡するラットが多かったため、TPN期間の再検討が必要であった。1週間のTPNで生存率が上昇し、IFALDモデルの作成過程で安定した成績を残せた。肝を採取し病理組織学的所見を検討すると、脂肪沈着・炎症細胞の浸潤といったNAFLD型のIFALDの発症が確認できた。一方で、肝組織中のTNFαやIL-6といった炎症性サイトカインの上昇は認められなかった。今後の課題として、病理組織学的所見と、その他の検体での検査結果の解離に関してさらなる解析および評価方法の検討が必要である。
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