甲状腺癌未分化癌は1年生存率16%と予後不良な疾患である。甲状腺未分化癌は、診断時に約70%に原発巣が隣接臓器に浸潤していることや、約半数に遠隔転移していることがあり、根治的治療が不可能な例も多い。未分化癌の早期発見、治療に応用できる可能性のある分子の創出のために、未分化癌の分子レベルでの病態の解明が必要である。本研究では、甲状腺未分化癌におけるprotein disulfide isomerase A3 (PDIA3)の発現が腫瘍免疫に影響し、未分化癌の悪性度に関わることを実証することを目標とする。本研究の結果から未分化癌の分子病態を明らかにし、将来的には早期発見や治療への応用が期待される。 まず、蓄積された甲状腺未分化癌、コントロールとして甲状腺分化癌と正常甲状腺の病理組織標本を用いて免疫染色を施行し、染色性を確認した。甲状腺乳頭癌、正常甲状腺に比し、未分化癌では発現が変化していた。臨床データを併せた解析では、PDIA3が甲状腺未分化癌の臨床病理学的特徴に影響する可能性が示された。また、コントロールとして用いた甲状腺分化癌についても解析したところ、分化癌でもPDIA3の発現が変化していた。臨床データでは、いくつかの因子と関連するとの結果も得られた。さらに甲状腺未分化癌由来の培養細胞を用いた実験では、PDIA3の高発現細胞と低発現細胞とが存在すること、それらの発現調整や薬剤投与により細胞の動態が変化することが分かってきた。今後は、さらに確認実験を行う予定である。
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