研究実績の概要 |
本年度は膵癌において追加の膵組織からのmRNA抽出および次世代シークエンサー(NGS)による解析を施行した。解析結果の分析についてはパスウェイ解析やタンパク質間ネットワーク解析を行い、重要と思われるハブ遺伝子を同定した。上位10個の遺伝子としてFN1, COL1A1, COL1A2,COL3A1, COL5A1, TIMP1, COL4A1, ITGB1, FBN1, COL5A2, COL4A2, SPARC, ITGAV, MMP14、が候補に挙がり、癌の進展度や転移など臨床病理学的に重要と思われる因子を検索した。これらに対して、前検証をおこなうべくオープンソースであるTGCAのデータバンクを用いて予後解析を行った。予後解析を行うとTIMP1 (P = 0.041), ITGB1 (P = 0.036), ITGAV (P = 0.033)が予後の悪化と関与しており、なんらかの予後を悪化させる因子と相関が考えられた。まず、検証を行うべく、ITGB1とITGAVに対しNGSを施行した症例に対し免疫染色(IHC)も追加で施行した。NGSによる発現量と免疫染色における染色度を評価し、膵臓癌組織における相関を確認した。ITGB1は相関に傾向がみられ(r = 0.552 P =0.118)、ITGAVについては有意な相関がみられた(r =0.625, P=0.039)。その為、当施設において術前化学療法を施行せず、手術した膵臓癌107例でITGB1、ITGAVについてIHCを行い、高発現群と低発現群に二群化し臨床病理学的因子との関係を検討した。ITGB1はリンパ節転移は腫瘍径、組織型に相関は見られなかったがITGAV高発現群では優位に腫瘍径が大きいことが確認された。しかし、予後や再発に対し多変量解析を行うと、ITGB1、ITGAVともに独立した予後、再発因子となった。
|