PTENは大腸癌の半数で発現異常を認める癌抑制遺伝子である、PTEN遺伝子変異症例に対するエビデンスの高い分子標的治療は確立されていない。ヒト大腸癌におけるPTEN発現異常の有無のみでは、病態の全体像を把握することが困難である。Pten欠損新規大腸癌マウスモデルを用いて、Pten欠損大腸癌における転写産物を網羅的な解析を行うことで、大腸癌におけるPTENシグナル経路に特徴的に変化を及ぼす遺伝子群を同定し、ヒト大腸癌における新規バイオマーカーの検索や新規治療開発に発展できると考える。Apcと共にPtenをノックアウトしたマウスは、Apcのみノックアウトしたマウスと比較し、腫瘍発現が早く、数が多く、粘膜筋板への浸潤傾向が強いことを確認した。さらに、採取した腫瘍からのqRT-PCRによるPten mRNAレベル、Western blotによるPten定量においても、Ptenノックアウトマウスにおいて発現が低下していることを確認した。PTEN欠損大腸癌関連遺伝子群の拾い上げのため、Apcと共にPtenをノックアウトしたマウスとApcのみノックアウトしたマウスから発生した腫瘍を、RNA-seq(n=3づつ)にて網羅的解析を行った。PTENシグナル下流をターゲットとした分子標的薬の投与を行い、投与後の大腸腫瘍RNAを抽出し、コントロール群と比較することで治療標的を抽出し、さらに免疫染色を追加しながら確認を行なっている。2022年度から若手研究「PTEN変異大腸癌の病態解析とAKT-mTORシグナルを標的とした治療応用」に引き継ぎ、さらに検討を加える。
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