研究実績の概要 |
悪性腫瘍の浸潤・転移に関連するとされる,EMTに関与する分子「EMT関連分子」に対する特異的な免疫反応の誘導と,それを応用した免疫療法の確立に向けた基礎研究を行った. EMT関連分子の中からTWIT,SNAIL,ZEBを選定し,コンピューターアリゴリズムを用いて,HLA classII分子(日本人に多いDR4,DR9,DR15)に親和性の高いと予想されるエピトープの候補を同定した.その候補エピトープの中から各EMT関連分子それぞれに2-3種類のペプチドを作成した.そのペプチドが特異的な免疫反応を示すCD4陽性細胞を誘導し得るかを検討した.健常人末梢血単核球(PBMC)からCD4陽性細胞を分離し,作成したペプチドで複数回刺激することで,ペプチド特異的に増殖する細胞株を樹立した.その細胞株は抗原提示細胞(APC)とペプチドとともに共培養することで,コントロールと比較して有意にIFNγを分泌した.すなわち,選定したEMT関連分子由来のペプチドは特異的なCD4陽性T細胞を誘導することがしめされた.次いで,樹立したペプチド特異的CD4陽性T細胞をそのペプチドの元となったEMT関連分子を発現している癌細胞株とともに共培養し,反応を観察した.その結果,ペプチド特異的CD4陽性T細胞はEMT関連分子陽性の癌細胞に対して,特異的な免疫応答を生じ,抗腫瘍効果を示すことが分かった.今後は,in vivoでの実験を行っていく予定である.
|