本研究では,マージナル肝移植冷保存後酸素化灌流プロトコールとリアルタイム臓器評価法を確立し,臨床応用可能な灌流装置の開発とマージナルドナー肝移植によるドナー不足解消を目的とした. BW 27Kg - 32KgのF1ブタを用い,心拍動下に肝臓摘出をする心拍動群(Heart-beating;HB群),および20分の心停止下に肝臓を摘出する心停止群(Donation after cardiac death;DCD群)の2群に関し検討を行った.いずれも肝臓摘出後は2時間の冷保存後,灌流装置を用い120分の室温酸素化灌流を行った.胆汁産生量は30minにおいてHB群がDCD群に比べ有意差をもって多かったものの,他群では有意差を認めなかった.胆汁産生量は90min でピークを迎える傾向にあった.また組織評価ではDCD群は90minにおいて,類洞開存度およびアポトーシス陽性細胞数はHB群と有意な差を認めなかった. 本年は上記研究に加え,心停止ドナー肝の酸素化灌流による肝細胞の機能評価を行った.心拍動下に摘出した肝臓を分離した肝細胞(HB群)と,心停止後30分間の温阻血を経て摘出した肝臓から分離した肝細胞(DCD群)を比較した.また,DCD群と,DCD群を分離前に30分間機械灌流した後分離した肝細胞(P-DCD群)を比較した.DCD群では肝細胞収量が優位に減少したが,肝細胞収量はP-DCD群で優位に多く,ADP/ATP比(エネルギー状態の評価)はP-DCD群で有意に低く,室温酸素化灌流により肝細胞のエネルギー状態改善が示唆された. 今回の検討では,室温酸素化灌流を行うことで心停止後においても臓器状態ならびに肝細胞の維持が可能であることが示唆された.新規灌流装置は灌流圧等のモニタリングが可能であり,移植可能限界にあるグラフトのViabilityの評価法の確立につながる可能性が期待される.
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