研究課題/領域番号 |
20K17577
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
原 伸太郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (00791112)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人工肺 / ECMO / 人工臓器 / 光硬化 / 3Dプリンター |
研究実績の概要 |
本研究は体内埋め込みが可能な次世代型人工肺作製のための研究である。これまで中空糸膜型人工肺は研究開始から20年以上に渡り、臨床で体外循環やECMOを始めとした治療に用いられてきた。しかし、中空糸膜型人工肺は臨床以前に動物実験の段階でも体内埋め込み型としては良好な成績を残せていない。その原因としては耐久性の高い抗血栓性・タンパク質吸着などの起こらない表面修飾材料がないといった問題もあるが、結露などの管理における問題、気管支との接続などといった解剖学的なアプローチの欠如が人工心臓と比べて少ないことにある。本研究では3Dプリンターによる立体構造技術を用いて一般的な中空糸膜ではない膜構造を構築することで、補助人工心臓のような体内埋め込み型の次世代型人工肺を開発し、生体肺移植に変わる肺移植患者に対する橋渡し治療を開発することを目的とする。 研究次年度である本年は前年度に開発したシリコーン系膜材料が3次元積層がうまく生かなかった問題を解決するために、材料そのものを開発することに注力した。 具体的には試作材料で積層しなかった問題はラジカル重合させる反応剤が3Dプリンターの主波長、エネルギー密度などの機械的制限と合わないことや材料自体の主たる目標もあり既存の硬化剤が使えないなどの問題を解決することで段差を有する形状までは光硬化で達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試作したシリコーン系膜材料で積層しなかった問題としては3Dプリンターの材料硬化に用いる主波長に問題があった。一般的な光硬化は主波長に応じて、ラジカル重合させる反応剤を決定するが、3Dプリンターで使用する場合は反応速度をかなり厳密にコントロールさせる必要があった。最終的には光の照射速度とラジカル剤濃度を考慮するだけで段差形状までは積層できることに成功した。しかし依然として材料の硬度が足りない問題は解決できていないことからある程度の形状制限は必要であると考えられる。 また、これまでの進捗の中からも生体適合性を加味すると使える材料が少ないことも問題となったことから協力先と議論し本プロジェクトに適した硬化剤を開発するに至った。現在、特許化を含めて検討中である。 研究環境としては、昨年度はCOVID-19の影響もあり、実験環境や共同研究先での実験が難しく進捗が停滞していたが、本年度は昨年度に比べてやや落ち着いたこともあり、オンライン会議の回数を増やしすことで進捗の細かい管理を行いつつ、一部実験環境を先方でも確立するなどの対応に注力するなど影響を最小化する取り組みを行い、昨年度の状況に比べると大きく研究進捗があった。 しかし、昨年度までの影響は大きく、特許化などが遅れたことで学会発表の実施や将来的な研究者との協力関係などが構築できないといったプロジェクト全体の問題は解決できていないため、最終年度およびその後につながる研究継続の計画が必要になると考えている。また実験できない時間が増えたこともあり、学内の研究者と相談する時間が大きく増えたこともあり、本プロジェクト以外についても応用できるなど人工肺に限らない多様性のある材料であることもわかってきた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究で、光硬化型の3次元積層可能なシリコーン系材料の開発が1段落着いたため、最終年度は実際にマイクロ流路などを用いてミクロ的な目線で人工肺に至る前にガス交換が可能かどうか検討を行う。近年はcovid-19の関連で類似研究者が増えているが、論文化されているものも含めて本研究の目的地まで到達できるものは少ないと考えている。本年度こそは研究全体のまとめとしても、パンデミックの終了宣言などに影響されない材料の特許出願と論文化を中心に研究を進めていく。 また今後の推進方策のマイナス部分としては、2021年末にかけて材料開発に必要なSiが半導体分野でも影響のあるほど不足しており、材料が入手できず高騰している問題もある。Si材料産出が中国、ロシアの寡占環境にあることから、周辺国情勢を考慮しても今後、更なる高騰および材料不足も考えられるため、
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次年度使用額が生じた理由 |
研究材料購入に際して、一部材料が半導体部族およびその原材料の高騰が原因で消費税等で端数が生じたため。
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