研究課題/領域番号 |
20K17580
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥村 晋也 京都大学, 医学研究科, 医員 (70830032)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 臓器保存 / 心停止肝移植 |
研究実績の概要 |
心停止後ドナーからの肝移植(心停止肝移植)はドナーの不足を補う新しい肝移植医療として注目されているが、肝臓(グラフト)の虚血時間が長くなることから、移植肝が長時間の低酸素状態にさらされる。そのため、移植後の肝障害(虚血再灌流障害)が強く、グラフトの機能不全や虚血性胆管障害を高率に発症し、通常の脳死肝移植に比べて術後成績および予後が不良であり、その改善策が強く望まれている。本研究では、ラット心停止肝移植モデルを用いて、臓器保存液に酸素化を行うことで、グラフト肝に十分な酸素化を行うことで、心停止肝グラフト機能の改善を目指す。 ラット心停止肝移植モデルを確立した。心停止時間を30分から60分の間で段階的に設定した心停止肝グラフトを使用した。レシピエントラットに実際に心停止肝グラフトを全肝移植し、移植後の虚血再灌流傷害の程度について評価を行った。臓器保存液の酸素化を行った群と、通常の単純冷保存群での比較検討を行った。 移植後の肝逸脱酵素(AST, ALT)、胆道系酵素(ビリルビン・ALP)、血管内皮障害マーカー、脂質酸化ストレスマーカーの測定結果では、酸素化群において虚血再灌流傷害の軽減が認められた。血漿中のサイトカインアッセイ、HE染色による傷害のスコアリング、TUNEL免疫染色によるアポトーシスのスコアリング(TUNEL Index)でも、酸素化群で虚血再灌流傷害の軽減が認められた。以上より、一定のグラフト機能の改善を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定したラット心停止肝移植モデルを確立した。 機械灌流を行いながら安定的に酸素化を行う実験系を作成することに時間を要している。 臓器保存液の酸素化を行い、グラフトの酸素化を行う実験モデルでは一定のグラフト機能の改善を認めた。実際に機械灌流保存を用いて効率的に酸素化を行うことで、さらにグラフト機能の改善を得られるかどうか、引き続き検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
機械灌流保存を行った肝グラフトを使用し、レシピエントへの移植実験を行う。対照群として、通常の単純冷保存群、単純冷保存に酸素化を加えた群の2群を設定し、移植後肝虚血再灌流障害の比較検討を行う。さらに、ドナーの心停止直後に灌流ポンプを用いてドナーの血管内の酸素化を行い、心停止後から臓器摘出までの間のグラフトの低酸素状態を改善し、移植肝の機能を改善できるかどうかの検討を行う。臓器保存中の酸素化を行うことで一定のグラフト機能改善効果を得ていることから、機械灌流保存で効率的にグラフトの酸素化を行うことで、さらなるグラフト機能改善を期待したい。また、臓器摘出前のドナー体内でのグラフト肝の低酸素状態を改善することができればさらに心停止肝グラフトの機能改善を期待できる可能性があるため、検討を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究についてはほぼ計画通りに使用したが、COVID19の影響もあり学会出張等の旅費の支出がなかったため、一部を次年度に使用させていただくこととした。
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