研究課題
心停止後ドナーからの肝移植(心停止肝移植)はドナーの不足を補う新しい肝移植医療として注目されているが、肝臓(グラフト)の虚血時間が長くなることから、移植肝が長時間の低酸素状態にさらされる。そのため、移植後の肝障害(虚血再灌流障害)が強く、グラフトの機能不全や虚血性胆管障害を高率に発症し、通常の脳死肝移植に比べて術後成績および予後が不良であり、その改善策が強く望まれている。本研究では、ラット心停止肝移植モデルを用いて、臓器保存液に酸素化を行うことで、グラフト肝に十分な酸素化を行うことで、心停止肝グラフト機能の改善を目指す。まず、マイクロサージェリーを用いた安定したラット心停止肝移植モデルを確立した。心停止時間を30分から60分の間で段階的に設定した心停止肝グラフトを使用した。レシピエントラットに実際に心停止肝グラフトを移植し、移植後の虚血再灌流傷害の程度について評価を行った。臓器保存液の酸素化を行った群と、通常の単純冷保存群での比較検討を行った。移植後の肝逸脱酵素、胆道系酵素、血管内皮障害マーカー、脂質酸化ストレスマーカーは、酸素化群において虚血再灌流傷害の軽減が認められた。血漿中のサイトカインアッセイ、HE染色による傷害のスコアリング、TUNEL免疫染色によるアポトーシスのスコアリングでも、酸素化群で虚血再灌流傷害の軽減が認められた。ATPアッセイでは、酸素化群で改善を認めた。また、生存率は、酸素化群で良好な成績であった。以上より、グラフト機能の改善を確認した。
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