研究課題
腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocytes: TILs)は乳癌の予後および薬物療法に対する治療感受性に関与することが報告されている。早期乳癌において腫瘍縮小による乳房温存率の向上、薬物反応性の可視化、化学療法の治療効果を元に追加の薬物療法を検討するresponse-guided therapyにつなげるという目的から、術前化学療法は標準的に選択される治療戦略である。術前化学療法を施行する際にTILsを含む治療前所見を用いた治療効果予測が、治療選択や予後評価に有用であると考える。申請者らの研究グループでは乳癌診療におけるFDG-PET/CTの意義について研究し、その過程でFDG-PET/CTのSUV値の変化が乳癌薬物療法の治療効果を反映することを発見しており、FDG-PET/CTを用いた治療効果予測の可能性を想起した。TILsには制御性T細胞、細胞障害性リンパ球、PD-1などの免疫チェックポイントを発現する機能的TILsの他、機能を持たないbystanderリンパ球が存在している。申請者らは機能的TILsの発現は症例により大きく異なり、CD8陽性細胞と共に予後、治療効果に影響することを見出した。また、細胞傷害性リンパ球のCD8と、抑制的に働くFOXP3の比をとったCD8/FOXP3比は、FDG-PET/CTのSUVmax値と相関し、術前化学療法の治療効果(pCR)とも有意に関連することを報告した。治療前の画像診断や針生検検体の病理学的評価から、腫瘍微小環境を評価することで、乳癌薬物療法の治療効果予測につながる可能性がある。画像診断と臨床病理学的因子を組み合わせ、より高い精度でpCRを予測することで、今後、高い治療効果が得られた乳癌に対する非切除療法の検討といった新しい乳癌治療戦略の開発への応用にもつながる結果を示した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Anticancer Research
巻: 43 ページ: 127~136
10.21873/anticanres.16141
腫瘍内科
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