研究課題/領域番号 |
20K17586
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野口 浩司 九州大学, 大学病院, 助教 (70844364)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 腸管ディスバイオシス / 歯周病 / 移植免疫 / 拒絶 / 皮膚移植 / 腎移植 |
研究実績の概要 |
歯周病は糖尿病や肥満、冠動脈疾患、脂肪肝、アルツハイマー病などの多種多様な全身疾患と関連があることが近年注目されている。また歯周病由来の歯周病菌が腸内に移行することにより、腸内細菌叢の変化(腸管ディスバイオシス)を惹起し、炎症性サイトカインを上昇させ、全身性の変化を起こすことが示唆されている。臓器移植の臨床に関しても歯周病と腎移植後の拒絶反応との関連性を示すReviewもある。一方でそのメカニズムは未だ解明されてはいない。 本研究は、代表的な歯周病菌であるPorphyromonas gingivalis(P.gingivalis)菌を経口投与して腸管ディスバイオスを引き起こしたマウスに同種異系皮膚移植や腎臓移植を行うことで、拒絶反応に代表される移植免疫に及ぼすメカニズムを解明する研究である。 現在、P. gingivalis菌の培養に成功し、マウスの同種異系皮膚移植の手技を確立した。また組織や臓器移植の免疫寛容に密接に関わるとされる制御性T細胞(Treg)やTh17を測定するため、マウスの血液を用いたフローサイトメトリーの手技を確立した。 今後は実際に同菌を経口投与させることで腸管ディスバイオシスを惹起したマウスの皮膚移植モデルを用いた移植免疫への影響を解明する予定である。 これまでの結果を、第33回日本バイオセラピー学会(シンポジウム)、第121回日本外科学会定期学術集会(ポスター)で発表した。マウスの皮膚移植モデルでの解明が進めば、組織移植のみでなく腎移植を含む臓器移植モデルでの研究を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、代表的な歯周病菌であるPorphyromonas gingivalisの培養に成功し、マウスの同種異系皮膚移植の手技やマウスの血液を用いた、臓器移植の免疫寛容に関するTregやTh17を測定するためのフローサイトメトリーの手技を確立した。
これまでの結果を、第33回日本バイオセラピー学会(シンポジウム)、第121回日本外科学会定期学術集会(ポスター)で発表した。
COVID-19の影響もあり、約3ヶ月間実験室が閉鎖されたことや、時間外の実験室の使用も制限されていることから計画よりやや遅れたものの、今後は実際にP. gingivalisを経口投与させることで腸管ディスバイオシスを惹起したマウスの皮膚移植モデルを用いた移植免疫への影響を解明する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
P. gingivalisを経口投与させることで腸管ディスバイオシスを惹起したマウスの皮膚移植モデルを用いた移植免疫への影響を解明する予定である。マウスの皮膚移植モデルでの解明が進めば、臓器移植モデルであるラットの腎移植モデルを用いた研究を検討している。 腸管ディスバイオシスと移植免疫の関係が解明できれば、今後、乳酸菌などのプロバイオティックス投与や便移植等により腸管ディスバイオシスを改善することで移植臓器の生着率の向上につながる可能性があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、歯周病菌を培養し、皮膚移植やフローサイトメトリーなどの手技を確立する ことに時間を要した。またCOVID-19の蔓延により、技術指導のために指導者を招致することができなかった。 次年度は、マウスに実際に歯周病菌の投与を行い、腸管ディスバイオシスと移植免疫の解明を行う。そのためには、腸内細菌叢の変化を次世代シークエンサーを用いるのでその解析を含めた費用、リンパ節における炎症性サイトのmRNAをRT-PCRを用いて解析するので試薬代、またフローサイトを用いて解析を行うためその試薬代が必要である。
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