研究課題/領域番号 |
20K17589
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
上本 康明 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (50818747)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳癌 / ASNS |
研究実績の概要 |
最近、ASNS (Asparagine synthetase)という分子が、アスパラギンの合成を促進することで上皮間葉転換 (EMT: epithelial-mesenchymal tran sition)を誘導し、乳がんの再発・転移を促進する事が報告された。私たちはこれまでに、自施設の乳がん組織において、ASNS遺伝子が高発現の症例は予後不良であることを見出した。本研究では、EMTを通じて引き起こされる乳がんの再発・転移の抑制を目標として、ASNSを標的とした分子標的治療薬の開発を目的とする。ASNSについて、これまで行った実験として、TaqMan RT-PCRシステムを用いて、10年以上の長期予後と臨床病理学的データの揃っている予備実験とは異なる558例の乳がん症例を対象に、乳がん凍結標本からRNAを抽出し、ASNSとmRNA発現と臨床病理学的因子および予後との検討を行った。その結果、全ての乳がん症例およびエストロゲン受容体 (ER) の陽性、陰性、リンパ節転移の有無に関わらず、ASNSの発現量は予後と関連していなかった(カプランマイヤー法、log-rank検定)。また、腫瘍径、腋窩リンパ節転移の有無、核異型度、ER、Human Epidermal Growth Factor 2 (HER2)、ASNS mRNAの発現を無再発生存期間、乳がん特異的生存期間について単変量、多変量解析を行った。腫瘍径、腋窩リンパ節転移の有無、核異型度、ER、HER2は単変量解析でいずれも有意な予後因子であった。腋窩リンパ節転移の有無、ERは多変量解析で有意な予後因子となったが、ASNS mRNA発現は単変量・多変量ともに有意な予後因子とはならなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乳がん組織を使用した検討は予定通り進んでいるものの、当初想定していた結果が得られておらず、また乳がん細胞株を用いた検討が進んでいないため。
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今後の研究の推進方策 |
乳がん組織からRNAを抽出し、TaqMan RT-PCR systemを用いて ASNSとEMTに関連すると言われるEcadherin, VimentineのmRNA発現を定量し、ASNSとの相関を検討する。乳がんのtissue arrayを用いてASNSに対する免疫組織科学を行い、ASNSタンパクの発現を評価し、予後との関連について検討する。また、タイプの異なる乳がん細胞株を用いて下記の実験を行う。乳がん細胞株をsiRNAを用いてASNSをノックダウンし、ASNS遺伝子の発現状況ならびにWST-1アッセイによる細胞増殖能を評価する。増殖能に差がでた乳がん細胞株を対象に、ASNSをsiRNAを用いてノックダウンするとともに、その乳がんサブタイプに効果が高いと思われる薬剤を投与した場合における細胞増殖能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の世界的な流行が生じたことにより実験試薬などが届かず、実験が滞っため、次年度使用金が発生した。繰越金は次年度に使用する試薬、機材など物品費にあてる予定。
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