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2020 年度 実施状況報告書

HOX遺伝子群の網羅的解析によるLumimalB乳癌予後予測モデルの確立

研究課題

研究課題/領域番号 20K17591
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

小谷 依里奈  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70868398)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード乳がん / サブタイプ / HOX遺伝子
研究実績の概要

ホメオボックス(HOX)遺伝子群は胎生期におけるマスターレギュレータであるとともに、近年は悪性腫瘍での異常発現が注目されている。アレイデータを用いた前実験の結果から、胎生期のHOX遺伝子発現と同様に、乳癌細胞においても隣り合ったHOX遺伝子の発現が強く連動しており、乳癌の予後と関わる分子生物的な役割を担っていることが示された。さらに、HOX遺伝子群の発現は腫瘍内で強く連動し合い、サブタイプ毎に連動パターンが異なること、PAM50により分類されたLuminal B症例ではHOX遺伝子群の発現パターンにより予後が規定されることが予想される。そのため、これら知見を確固とするために、乳癌細胞における全38種類のHOX遺伝子の発現を、バイオインフォマティクス的手法を用いて網羅的に解析し、サブタイプや予後を含めた分子生物学的意義を明らかにすることを目的として本研究を想起した。これにより乳癌の基礎的な悪性化メカニズムの解明と、新たな多遺伝子アッセイの創造と確立が予測され、基礎・臨床両面における貢献が期待されると考えられる。
これまでにLuminal Bサブタイプにおける全HOX遺伝子によるクラスタリングによって予後良好・不良群を分けることが可能であり、現在2群間にどのような生物学的な差異があるのか解析が進んでいる。今後はメタ解析で使用したマイクロアレイデータにおいて2群間に差がある遺伝子を抽出し、Gene Ontologyの解析やpathway解析によって、予後不良群の腫瘍内で起きている生物学的事象を抽出する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでのHOX遺伝子群全体と乳癌における検証は、各HOX遺伝子に1つ1つ注目した基礎的な論文と、それらを集めた文献的レビューに留まっている。しかし現在までの進捗から、乳癌細胞においても相同性と連動性が高いことが判明した。これにより乳癌進展メカニズムにおけるHOX遺伝子群の機能的な役割や、Luminal Bの臨床検体での予後の検証など、乳癌の基礎・臨床に大きく貢献すると考えられた。またこれらによって得られた分子生物学的な知見を、in vitroの系を用いて基礎実験で検証し、Luminal B群の予後不良を規定する分子生物学的メカニズムを解明すべく、実験が進んでいる。特に、複数の乳がん細胞株を用いた研究から、HOXBクラスターの複数の遺伝子発現が、HOTAIRおよびCDX2遺伝子の発現とパラレルに増減することが判明しており、これらはWNT経路の活性と相関が認められることが明らかになった。

今後の研究の推進方策

これまでの研究からHOX遺伝子を強く連動する遺伝子(CDX-2, HOTAIR等)が判明したため、これらとHOX遺伝子群の関係をさらに複数の乳がん細胞株でも検証する。また、これら遺伝子の発現調節により、HOX遺伝子の発現の変化と、細胞形質の変化の相関を検証する。特に、HOX遺伝子は胎生期に強く発現する細胞であり、上皮間葉転換 (EMT)などの形質変化を生じることが知られているため、これらを重点的に検証する。また臨床面においては、先のマクロアレイデータを使用し、Luminal Bの単一サンプルに対しても予後良好・不良群どちらに当てはまるかを判定できるようにするためのアルゴリズムの構築(モデル式をつくる)を行う。具体的な手法として、それぞれの群におけるプローベの平均値を定め、それぞれのクラスターの代表を算出する方法がある。また高度なものとしては人工知能を用いた機械学習を使用する手法があり、一般的にはこちらの方がボーダーラインの判別精度が上がるとされている。両者の手法を行い、比較検討していく。

次年度使用額が生じた理由

研究費の適正使用を行った結果、次年度使用額が生じた
物品費及び人件費として適正に使用する予定である。

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公開日: 2021-12-27  

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