本研究は、ホルモン受容体(HR)陽性乳癌におけるサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害剤の耐性メカニズムを解明することを目的とする。近年、転移再発HR陽性乳癌において、内分泌療法とCDK4/6阻害剤の併用が劇的な無増悪生存期間(PFS)の延長を示し、標準治療となった。しかし、薬剤耐性の発現を避けられず、腫瘍の再増大が起きることが臨床上の問題となっている。そこで、CRISPR/Cas9のゲノム編集技術を用いてWhole-genome knockout screenを行うことで耐性遺伝子を網羅的に探索し、癌細胞における内因性のCDK4/6阻害剤耐性の原理を明らかにする。本研究のアプローチを用いれば、従来同定困難であった新規耐性メカニズムを発見し、薬剤耐性克服の治療開発の一助となる知見を得ることが可能と考えられる。 【最終年度の研究成果】我々はHR陽性乳癌のモデルであるMCF7を用いて、Cas9を導入し、その安定発現と酵素活性を確認した。Whole genome knockout libraryを用いてCRISPR/Cas9によるゲノム編集を行い、それらの細胞とCDK4/6阻害剤の一種であるpalbociclibとの共培養を約2週間行った。最終産物の細胞からgenomic DNAを抽出し、それぞれのsgRNAに付随するバーコードをPCRで増幅させ、NGSによる解析を行った。現在はバイオインフォマティシャンと共同での解析作業過程であるが、既報にて確認されているRbのノックアウト株が細胞増殖を認めるなど耐性候補遺伝子同定のアッセイが機能したことを示唆する結果が確認されている。
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