研究課題/領域番号 |
20K17597
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
登尾 一平 熊本保健科学大学, 保健科学部, 助教 (00832007)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脱シアル化 / Glycocalicin / CD42b |
研究実績の概要 |
本申請研究は、輸血用血小板製剤中の血小板が肝機能改善に関与するメカニズムの解明を目的としている。血小板による肝機能改善には、保管に伴う血小板自体の質的変化、特に膜表面の構造および機能的変化が重要であると予測される。本年度は、保管血小板の ex vivo における機能的変化や膜糖タンパク発現の経時変化を解析することを目的とし、脱シアル化をはじめ、各種マーカーの経時的変化を解析し、以下の成績を得た。 ①血小板活性化マーカーである P-selectin や phosphatidylserine (PS) の露出や、血小板膜糖タンパクである glycoprotein (GP) Ibα(CD42b)、GPIIb (CD41) の膜発現を flow cytometry を用いて測定した。 保管血小板の P-selectin 発現血小板や PS 露出血小板、 さらに脱シアル化血小板の割合は経時的に増加した。また、CD41 の発現に変化はみられなかったが、CD42b の発現は経時的に低下した。 ②保管血小板の CD42b の発現は保管するに従い低下していたことから、保管血小板上清には CD42b の断片 ( Glycocalicin ) が存在する可能性が示唆された。そこで上清中の CD42b 断片を ELISA を用いて測定したところ、保管するにつれて有意に増加していた。 ③HepG2 細胞を用いて血小板を添加したところ、血小板未添加群と比較して血小板添加群では HepG2 細胞の増殖に有意な差を認めたが、血小板の脱シアル化の有無は、HepG2 細胞の増殖に影響を与えなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はコロナ禍にもかかわらず、計画通り保管血小板中の脱シアル化血小板の評価法を構築し、保管血小板の膜表面の構造および機能的変化を解析した。その結果、脱シアル化血小板について新たな知見が得られ、当初の想定とは異なる臨床検査への応用の可能性を見いだせた。 次に、血小板または脱シアル化血小板添加による HepG2 細胞の増殖を WST assay で評価したが、予想と反して有意差は見られなかった。HepG2 細胞は腫瘍細胞であり、増殖能が高く、通常の培養条件では血小板添加による影響が認められにくい可能性が考えられた。これらの問題点を解消するために無血清条件で HepG2 細胞で再検討したが、脱シアル化の有無では差が見られなかったため、増殖能評価法を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は保管前および保管後血小板と HepG2 細胞を直接または間接共培養し、肝細胞増殖を BrdU assay、肝細胞情報伝達系解析(JAK や STAT リン酸化を western blotting により解析) を実施する。さらに脱シアル化血小板の臨床応用の可能性に関して解析を進める。
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