研究課題/領域番号 |
20K17597
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
登尾 一平 熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (00832007)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脱シアル化血小板 / ERK / p38 / CD42b |
研究実績の概要 |
本申請研究は、輸血用血液製剤中の血小板が肝機能改善するメカニズムの解明を目的としている。これまでの解析では、血小板を血液製剤バッグで保管すると、活性化血小板や脱シアル化血小板が経時的に増加することを明らかにしてきた。さらに、脱シアル化血小板の機能解析では、凝集能や粘着能が亢進していることを確認している。これらの結果より、脱シアル化血小板が肝機能改善を促進させる可能性が考えられた。 本年度は、脱シアル化血小板が肝細胞へ及ぼす影響を検証するために、ヒト肝がん細胞株である HepG2 細胞を用いて以下の項目の検討を行った。 ①脱シアル化血小板を作成した後に HepG2 細胞に添加し、WST-assay で増殖能を検討した。その結果、脱シアル化血小板添加群で、血小板添加群や未添加群と比べて有意に増殖が促進された。② HepG2 細胞内の細胞周期の解析を、Cell Cycle assay で評価したところ、脱シアル化血小板添加 6 時間で G2/M 期の細胞が有意に増加した。③これまでの結果より、脱シアル化血小板は HepG2 細胞の増殖を促進させている可能性があることから、 HepG2 細胞内の情報伝達系を測定したところ、脱シアル化血小板添加群で MAPK の ERK と p38 経路が活性化されていた。 以上の結果より、脱シアル化血小板が HepG2 細胞の増殖を促進させるメカニズムとして、ERK 経路や p38 経路が関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はコロナ禍で遠隔授業の対応などにより研究に遅れが生じた。 さらに、脱シアル化血小板が HepG2 細胞内の JAK2-STAT3 経路の活性化を予測していたが検出されなかったことから、他の増殖に関与する経路を追加検証するため、時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
脱シアル化血小板が ERK や p38 経路を介して HepG2 細胞を増殖させる可能性があることから、増殖への関与を中心に検討する。 ① HepG2 細胞の細胞内情報伝達系の解析(ERK や p38、JNK、Aktなど) ② MAPK 阻害剤を用いた検討(WST-Assay、細胞内情報伝達系) ③ HepG2 細胞の細胞周期を BrdU で評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、遠隔講義や実習へ対応する必要があり、研究進捗に遅れが生じた。また、当初の研究計画以外に追加検証する必要が生じ、その検討に時間を要した。今後は、脱シアル化血小板が HepG2 細胞に及ぼす影響について以下の項目を中心に検証する。① HepG2 細胞の細胞内情報伝達系の解析(ERK や p38、JNK、Aktなど) ② MAPK 阻害剤を用いた検討(WST-Assay、細胞内情報伝達系) ③ HepG2 細胞の細胞周期を BrdU で評価する。
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