研究課題/領域番号 |
20K17598
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研究機関 | 群馬県衛生環境研究所 |
研究代表者 |
高澤 慎也 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (40421094)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小児外科 / 手術シミュレーター / 腸管吻合 / 低出生体重児 |
研究実績の概要 |
本研究初年度では、低出生体重児の人工肛門閉鎖術を対象として消化管吻合のトレーニングモデルを開発し、その表面的および構成概念妥当性評価を科学的に行った。 まずwetタイプとdryタイプの2種類の腸管モデルを開発した。ブタ腸管を工業用CTでスキャンし、粘膜面の形状を取得し、その3Dデータを基に低出生体重児のストマ閉鎖時の腸管のサイズを模した模擬腸管を開発した。模擬腸管内腔の直径は口側が15mm、肛門側が6mmとし、素材は同社の超軟質ウェット素材、および従来の模擬腸管に近いウレタン素材(ドライ素材)を用いて2種類の模擬腸管を作成した。 複数の小児外科医に実際に吻合を行ってもらい、表面的妥当性評価として、実施後にアンケート調査を行った。それぞれの腸管に対するアンケート回答結果を比較したところ、ウェット素材はドライ素材と比較して、『外観』、『軟らかさ』、『総合的なリアリティ』、『練習に有用』の項目で有意に評価が高かった。 また、構成概念妥当性評価として、吻合に要した時間、針糸の数、リークテストを行った際の吻合部リーク圧を計測し、被験者の低出生体重児に対する腸管吻合の手術経験数との相関を検証した。ウェット素材の腸管モデルにおいて、吻合部リーク圧が手術経験数と有意な相関を示したが、ドライ素材では相関は認めなかった。一方、吻合所要時間については、ドライ素材では手術経験数と相関を認めたが、ウェット素材では相関を認めなかった。 本研究で開発したウェット素材の腸管モデルは超低出生体重児の腸管をリアルに再現できており、従来の腸管モデルより練習に適していると考えられる。また、吻合後のリーク圧は実際の臨床経験と有意な相関があり、これは経験者ほどリークしにくい吻合ができることを示しており、本モデルの構成概念妥当性を証明している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画では初年度で複数の腸管モデルの開発と、表面妥当性評価を行う予定となっており、それは達成している。また、次年度前半にそれぞれの構成概念妥当性評価を行い、最適なモデルを選定する予定であったが、すでにそれも達成し、現在論文を投稿中である。予定では次年度後半でトレーニング効果検証を開始することとなっており、これも早期に始められる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、複数施設の小児外科医に協力をあおぎ、トレーニング効果を検証する。モデル腸管を吻合した際の所要時間や吻合部リーク圧といった項目のラーニングカーブを確認する。また、トレーニング導入前後で実際の臨床での吻合成績が向上するかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は新型コロナウイルスの流行にともない、移動が制限されたこともあり、当初予定していた、腸管モデル開発のための打ち合わせをZoomに変更した。また、開発した腸管モデルの他施設での評価実験などの機会も減らした。その結果、主に旅費の使用が減り、次年度へ繰り越す形となった。 次年度では、複数施設へ腸管モデルを郵送し、各施設でトレーニングを行い、トレーニング効果や臨床への効果を評価する研究を計画しており、助成金の余剰分に応じて参加施設を多く募り、評価精度を向上させる予定である。
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