研究実績の概要 |
血管内腫瘍栓を合併した原発性肝細胞癌は極めて予後不良であり、有効な治療法の開発が立ち遅れている原因としてその成因および病態が解明されていないことが理由の一つとして挙げられる。申請者らは、近年報告されてきた新しい技術である1細胞での全RNA シークエンス解析技術(single cell RNA sequence: scRNA-seq)を用いて肝細胞癌を構成する全細胞の遺伝子発現を網羅的に解析することに成功した。scRNA-seqは今まで組織全体の遺伝子を検査するバルク解析では全く得ることができなかった新しい細胞集団、遺伝子発現の違いを同定することが可能であり、癌の性質を解明する上で有用な新規アプローチである。本研究ではscRNA-seqを応用し、腫瘍栓を構成する細胞種の同定、および原発巣と比較した癌細胞の遺伝子発現プロファイルを明らかにし、腫瘍栓の形成メカニズムの解明および新規の治療ターゲットとなる遺伝子を同定することを目的としている。シングルセル解析を用いて47例(HBV陽性例19例、HCV陽性例12例、nonBnonC例16例)の肝細胞癌の遺伝子解析を行い、特定の遺伝子を発現、分泌する肝星細胞が肝細胞癌の増殖に重要であることを報告した。(Myojin Y, Sugiyama M, Kokudo N, et al. Gastroenterology. 2021 Apr;160(5):1741-1754.e16.)
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