研究課題/領域番号 |
20K17606
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
新部 彩乃 (樺嶋) 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (20445448)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | cGAS / CTL |
研究実績の概要 |
今年度は本研究課題初年度としてcGAS-STINGシグナル経路に必須となる因子の膵癌組織における発現の確認をまず行った。所属機関において外科的切除を受けた膵臓癌50例についてcGASおよびSTINGの免疫組織化学染色を行い、その発現レベルと生存率の相関を観察したところ、STINGの発現はほとんどの膵癌組織において一定の発現量があることが示された。一方でcGASの発現は組織によって発現レベルに大きなばらつきが見られ、おおよそ40%程度の膵癌組織でのみcGASの発現が観察された。更にcGASの発現の強さと患者生存期間 (OS)には正の相関が見られた。また、細胞障害性を発揮するcytotoxic T-cellのマーカーであるCD8の免疫染色では、cGAS発現が高い組織ではCD8陽性細胞の割合が高く、cGASの発現度合いとCD8陽性細胞の割合との間にも正の相関が確認され、cGAS-STINGシグナルが膵癌においても腫瘍免疫の活性化に寄与することが示唆された。cGASまたはSTINGの発現割合については膵癌の細胞株およびいくつかの樹立したオルガノイドにおいても類似していた。 また、BCL2 familyタンパクの阻害によるcGAS-STINGシグナル経路の活性化について膵癌細胞株PANC-1細胞を用いて確認を行った。BCL2 inhibitorであるNavitoclax処理により、ミトコンドリア障害が引き起こされ、ミトコンドリアDNA(mDNA)結合タンパクであるTFAMの細胞質内への放出が検出された。また、その状態でcGAS-STINGシグナルの標的因子であるinterferon-a, b, TNFaなどの発現も亢進していることが確認され、BCL2阻害によるmDNA放出によりcGAS-STING経路の活性化を起こすという仮説が膵癌においても検証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した当初の研究計画よりも少し進んだ成果が現在のところ得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、臨床検体由来オルガノイドの株数が4株で、そのうち2株のみが今年度新しく樹立できた株である。本来ならば10株前後は少なくとも検討できるよう揃えたいところである。現在、マウス発癌モデル由来のオルガノイド株も樹立すべく、発癌モデルを作成中である。トランスジェニックマウスを使用しているが、出生率が想定外にもあまり高くないため、今後交配スケジュールを詳細に組んでなるべく早く個体を確保できるように努める。本研究で使用する予定のノックアウト細胞株の作成はほとんど終了しつつあるが、オルガノイドのノックアウト株がまだ不十分である。できるだけ作成を急ぎ、各アッセイに使用できるよう備える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度購入を予定していた試薬が国内在庫切れとなり、海外発送予定であったが、年度末となり、国内到着が年度をまたぐ可能性が生じたため、急遽購入を取りやめた。この使用計画分は翌年度早々に同試薬購入分となり、使用される予定である。
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