研究実績の概要 |
本研究は膵臓癌におけるcGAS-STINGシグナルの活性化レベルについて解析をするとともに、その抗腫瘍効果の増強を狙うことを目的とした新規の治療戦略開発を進めてきた。 これまでの検討で、膵臓癌組織検体中のcGAS-STINGシグナル活性化の有無により癌細胞を取り囲む癌間質組織から癌組織内部にかけて浸潤する細胞傷害性T細胞の数が異なることを見出しており、このことは癌進展抑制性あるいは癌進展促進性を有する癌間質細胞の特徴と相関があることを見出し、昨年度英科学雑誌Scientific Reportsに論文として発表した (Kabashima et al., doi:10.1038/s41598-022-14297-5)。 これまでの検討では臨床組織検体中で観察されたcGAS-STINGシグナルの強度や間質細胞の特異的マーカー発現の有無および細胞障害性T細胞の浸潤レベルの観察およびtranswell チャンバーを用いた生理学的遊走能を調べる間接的アプローチをメインとしていたが、本年度はこれら癌細胞と間質細胞、免疫細胞など癌免疫微小環境を構成する細胞同士のインタラクティブな生理作用について直接的解析を進めるべく、共同研究先である米Mayo Clinicにて臨床検体の採取および培養に取り組んだ。当施設では外科的に採取された臨床検体が個別化治療を目的とし保存・維持されている。cGAS-STINGシグナルの有無を免疫組織化学的に調べ、解析対象とするサンプルリストを作成する作業に取り組んだ。目的の臨床検体の入手にやや時間がかかったものの、これまでに6種類のサンプル情報を入手・マウス体内で維持できている。今後は更にサンプル数を増やしていき解析対象を広げていくとともにsingle cellレベルでの解析を可能にするための準備を進める。
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