1.HCT116、HT29細胞にPROK2遺伝子を導入後マウス皮下に移植し、PROK2抗体を腹腔内投与したところ、腫瘍抑制はあるものの、有意差は認めなかった。そのためPROK2の受容体である抗PROK受容体2抗体を用いて抗腫瘍効果を検討した。colo320をマウス皮下に移植し、抗PROK受容体2抗体を投与したところ、腫瘍の抑制効果が得られた。 2.PROK2遺伝子を導入した大腸癌細胞株(HCT116、HT29)を用いて脾臓注入し、PROK2遺伝子導入した群で、Control群と比較し、有意に肝転移は増加していることを確認した。脾臓注入後に抗PROK2抗体をマウス腹腔内に投与し、2週間後に試験開腹を行なったが、あきらかな肝転移抑制効果は認めなかった。同様の実験を実験1に準じて抗PROK受容体2抗体を用いて行なったところ、抗PROK2抗体投与によりあきらかな肝転移の抑制効果を認めた。 実験1.2より、PROK受容体を解した回路をブロックすることで腫瘍増生および肝転移が抑制される可能性があることが示唆された。これまでの大腸癌臨床症例でのPROK2発現やPROK受容体2との発現との報告を裏付ける結果となった。 3.リキッドバイオプシーを用いたProkineticin2の役割の検討 現在ヒト大腸癌患者131例において、血中PROK2濃度を測定し、臨床組織学的因子との関連について検討を行なっている。PROK2の陽性率は14.5%であった。同時に VEGF濃度を測定し、VEGF陽性症例およびStageIV(他の因子が予後に関わっている可能性が高いと判断)を除外した85例で検討を行うと、有意に無再発生存期間 および全生存期間がPROK2陽性例で予後が不良であることを見出しており、多変量解析においてもPROK2が独立再発予測因子(血行性転移との関連を示唆)となることが確認されている。
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