研究実績の概要 |
新たな胃癌治療として免疫療法が注目されている。約20%の胃癌ではDNAのミスマッチ修復(Mismatch repair:MMR)異常があり、高頻度のマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability high: MSI-H)の胃癌では、抗PD-1抗体の有効性が報告されている。一方で、免疫療法の対象である胃癌2次治療群では、MSI-H胃癌は約5%程度と少ないことが課題となっている。我々は、MSIとは異なるスペクトラムを示すEMAST(Elevated microsatellite alterations at selected tetranucleotide repeats)について報告してきた。MSIとは異なるスペクトラムを示すEMASTがDNAのミスマッチ修復異常であるMSH3の欠失のバイオマーカーであることも報告されており、EMAST大腸癌では、MSI-H大腸癌と同様に癌細胞周囲への細胞障害性T細胞(CD8陽性細胞)の浸潤を認めることが報告されている。抗PD-1抗体が奏功すると報告されているEpstein-Barr virus(EBV)陽性胃癌ではリンパ球浸潤が多いと報告されており、EMAST陽性胃癌では抗PD-1抗体の治療対象群になりえる可能性が推測される。本研究では、EMAST陽性胃癌でPD-1/PD-L1経路を介した免疫抑制が生じている可能性を検証し、EMAST陽性胃癌癌の分子機構の解明、抗PD-1抗体の治療対象になり得るかを検証する。本年度は、胃癌腫瘍組織、正常組織よりDNAを抽出し、multiplexPCR法でそれぞれ胃癌患者のEMAST,MSI statusを解析し、胃癌患者のEMAST,MSI statusを同定し、予後やEBV感染などの関連について解析を進めている。
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