研究課題/領域番号 |
20K17610
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
北嶋 貴仁 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (30586772)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胃癌 / EMAST / PD-1 / EBV / MSI |
研究実績の概要 |
新たな胃癌治療として免疫療法が注目されている。約20%の胃癌ではDNAのミスマッチ修復(Mismatch repair:MMR)異常があり、高頻度のマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability high: MSI-H)の胃癌では、抗PD-1抗体の有効性が報告されている。一方で、免疫療法の対象である胃癌2次治療群では、MSI-H胃癌は約5%程度と少ないことが課題となっている。我々は、MSIとは異なるスペクトラムを示すEMAST(Elevated microsatellite alterations at selected tetranucleotide repeats)について報告してきた。MSIとは異なるスペクトラムを示すEMASTがDNAのミスマッチ修復異常であるMSH3の欠失のバイオマーカーであることも報告されており、EMAST大腸癌では、MSI-H大腸癌と同様に癌細胞周囲への細胞障害性T細胞(CD8陽性細胞)の浸潤を認めることが報告されている。抗PD-1 抗体が奏功すると報告されているEpstein-Barr virus(EBV)陽性胃癌ではリンパ球浸潤が多いと報告されており、EMAST陽性胃癌では抗PD-1抗体の治療対象群になりえる可能性が推測される。本研究では、EMAST陽性胃癌でPD-1/PD-L1経路を介した免疫抑制が生じている可能性を検証し、EMAST陽性胃癌の分子機構の解明、抗PD-1抗体の治療対象になり得るかを検証する。本年度は、胃癌腫瘍組織、正常組織よりDNAを抽出し、multiplexPCR法でそれぞれ胃癌患者のEMAST,MSI statusを解析し、胃癌患者のEMAST,MSI statusを同定し、予後やEBV感染などの関連について解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
multiplex PCR法を用いて、胃癌患者のEMAST,MSI statusを同定する手技は確立された。一方で、低酸素培養下での胃癌EMAST陽性細胞株の作成に難渋し、時間を要している。そのため、現在までに抗PD-1抗体治療を施行された胃癌患者におけるEMAST,MSI,EBV statusを同定し、治療効果との相関について検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、抗PD-1抗体を投与した胃癌患者におけるEMAST,MSI,EBV statusを同定し、Retrospectiveな検証を行う一方で、多数の胃癌患者の患者組織を用いた解析を継続しつつ、低酸素培養下でのEMAST陽性胃癌の作成を行い、EMAST陽性胃癌癌の分子機構の解明、抗PD-1抗体の治療対象になり得るかを検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
低酸素下における実験によるEMAST陽性胃癌細胞の作成に難渋し、計画していた実験を進めることができないことから、予定していた実験に着手できないため。
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