研究課題/領域番号 |
20K17613
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
美濃地 貴之 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30850325)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵島移植 |
研究実績の概要 |
組織構築における細胞数の設定において、血管網の構築およびスフェロイドの形態安定性の観点から、0.33cm2の基盤上で、HUVEC数 1×105、NHDF数 1×106を至適条件とした。MIN6スフェロイドを用いた検討では、組織内においてスフェロイドの崩れを認めたため、フィブリンゲル内で共培養を行い、スフェロイドの形態維持および血管網の形成を認めた。hiPS β細胞スフェロイドを用いた検討では、フィブリンゲルを使用せずに、組織内でのスフェロイドの形態維持が可能であり、血管網の形成を認めた。次に、作成した血管化β細胞スフェロイド組織の機能の検証を行い、細胞実験では、MIN6およびhiPS β細胞を用いた血管化組織において、インスリン遺伝子発現およびインスリン分泌量の有意な上昇を認めた。動物実験では、hiPS β細胞を使用し、非血管化組織群およびコントロール群と比較し、血管化組織移植群において、随時血糖値およびグルコース負荷試験での血糖値の有意な低下を認めた。非血管化組織群とコントロール群の両群間ではその有意差を認めなかった。また、血管化組織群では、移植組織片の摘出後に随時血糖値の再上昇を認めた。摘出した組織の免疫組織化学染色では、血管化組織移植群で、移植後1日目および28日目において、単位スフェロイド当たりのインスリン陽性細胞の占める面積が有意に広く、加えてグラフト内血管数を多く認めた。また由来血管の評価を行い、血管化組織内でレシピエント由来血管が経時的に増加することを確認し、さらにはグラフト由来血管と吻合する所見を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitroではMIN6、SC-βcellsを用いた血管化膵組織の機能的有効性を検討できた。 In vivoでは、糖尿病モデル化した免疫不全マウスへ、SC-βcellsを用いた血管化膵組織を移植することにより、皮下への血管新生およびマウスの血糖値の低下を認めた。また摘出した組織の免疫組織化学染色による評価により、組織への血管新生がそのメカニズムの一因と考えられた。 以上よりin vivoおよびin vitro実験にて組織の血管化の有効性を示すデータ得られたため, 概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
in vivo実験において、血管化組織の1型糖尿病に対する一定の治療効果を認めたが、その効果を更に上げることが今後の課題である。その課題に対し、血管化組織の有効性の更なる検証について、①hiPS β-cell細胞数の違いによる治療効果の評価②間質細胞として共培養に用いる細胞種の検討③血管化組織のインスリン分泌能における分子メカニズムの解明が必要であると考える。また膵島皮下移植のヒト臨床応用へ向けた大動物を用いた実験系による検討が必要であると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症に関する緊急事態宣言発令等により、研究の進捗状況に遅れが生じたため
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