本研究では、自然リンパ球に着目し、IBDの病因および病態に関与する免疫寛容の破綻機構を明らかにすることを目的とした。 まず正常大腸粘膜にどのようなILCが存在するのか解析した。表面抗原を用いてflow cytometryで解析した結果、正常大腸には、ILC1とILC3が存在していた。 CD45陽性CD127陽性CD117陽性集団がILC3だが、ILC3はさらにNKp44-とNKp44+ ILC3の2分画の集団が存在していた。ILC2は、CRTH2陽性であり皮膚や肺には多いと報告されているが、正常大腸にはほとんど存在していなかった。ILC1はT-betおよびT-betをコードするTBX21を高発現し、ILC3はRORγtをコードするRORCという遺伝子を高発現していた。それぞれILC1、ILC3を定義する転写因子であり、正常大腸にILC1、ILC3の2集団が存在することが検証された。ギムザ染色より、いずれの分画も形態的にリンパ球の形態であることを確認した。分画間に形態的な差はなかった。大腸ILCの分画割合を評価したところ、NKp44+ILC3が正常で最も多く 存在するILC分画であった。 次に炎症性腸疾患検体を用いて解析を行った。UC非炎症部と正常大腸では、ILC分画の分布に差はなかったが、UC炎症部では、ILC1 (37.8%) が増加し、NKp44+ ILC3 (11.1%) が減少していた。UC非炎症部および正常大腸に存在するNKp44-/+ ILC3はいずれもRORCやIL23Rを高発現し、正常大腸NKp44+ ILC3はIL22を高く発現していた。ILC1は、いずれの組織においてもTBX21やIFNGを高発現し、類似した遺伝子発現パターンを示した。UC炎症部に存在するNKp44- ILC3は、ILC1とILC3の両者の特徴を有する遺伝子発現パターンを示した。
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