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2021 年度 実施状況報告書

肝細胞癌術前がん免疫療法症例の腫瘍浸潤リンパ球を用いた抑制性免疫の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K17618
研究機関山口大学

研究代表者

新藤 芳太郎  山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (70749811)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード肝細胞癌 / ペプチドワクチン / 癌免疫療法
研究実績の概要

肝細胞癌(HCC)は仮に根治切除を施行しても高率に残肝再発をきたす難治性疾患である。近年、各種消化器癌に対する免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を用いたがん免疫療法が標準治療となりつつある。しかし、HCCの中でICIが奏効するのは免疫原性が高く細胞障害性T細胞(CTL)が多数浸潤している一部のいわゆるHot tumorのみでありHCCの約20%に過ぎない。したがって、HCCにおけるICIの抗腫瘍効果を高めるためには、免疫原性が低いことでCTLが浸潤しにくいCold tumorをいかにしてHot tumorに誘導するかが大きな課題である。本研究の目的は、根治切除可能肝細胞癌(HCC)に対する術前・術後補助免疫療法としてのHSP70由来ペプチド+GPC3由来ペプチドと新規免疫アジュバンドであるsLAG3-IgとPoly-ICLCを用いたがんワクチン療法を行った患者由来の切除腫瘍組織を用いて、それらに含まれるリンパ球の機能を解析することである。
20症例に手術前に6回ワクチン投与後に根治切除を行った。切除標本はH&E染色およびHSP70、GPC3、CD8の免疫組織化学的解析を行った。また、腫瘍浸潤リンパ球を抽出し53種類の抗体を用いてマスサイトメトリー(CyTOF)により解析した。
病理組織学的解析の結果、10名の患者において腫瘍内への高いCD8+T細胞の浸潤が認められ、これらの患者は免疫学的Hotと考えられた。ワクチンを投与することで、一部のCold HCCがHotへ変化している可能性が示唆された。切除標本より抽出した腫瘍浸潤リンパ球のマスサイトメトリー解析では、ワクチン投与群において、病理学的にHotと判断した症例はColdな症例と比較して、CD8+T細胞上のチェックポイント分子(PD-1、TIGIT)の高発現を認め、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法が抗腫瘍効果を高める可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

20名の切除可能HCC患者に対して術前6回皮内投与後、根治切除術を施行した。ワクチン投与前生検組織および腫瘍切除検体を用いてCD8、PD-1、HSP70、GPC3に関する免疫組織化学的検討を行った。さらに、腫瘍切除検体に関しては、抽出した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)をマスサイトメトリー(cytometry by time-offlight:CyTOF)を用いて解析した。

今後の研究の推進方策

ワクチン療法等の前治療を施行せずに切除をおこなったHCC切除標本の腫瘍壊死、腫瘍抗原発現状況およびCD8+T細胞浸潤状況に関して免疫病理組織学的に検討を行う。マウス腫瘍モデルを用いたワクチン療法と抗PD-1抗体の併用療法の抗腫瘍効果の検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

年度末に購入予定であった試薬の納入が翌年度にずれ込んだため。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Novel adjuvant dendritic cell therapy with transfection of heat-shock protein 70 messenger RNA for patients with hepatocellular carcinoma: a phase I/II prospective randomized controlled clinical trial2021

    • 著者名/発表者名
      2.Matsui H, Hazama S, Nakajima M, Xu M, Matsukuma S, Tokumitsu Y, Shindo Y, Tomochika S, Yoshida S, Iida M, Suzuki N, Takeda S, Yoshino S, Ueno T, Oka M, Nagano H.
    • 雑誌名

      Cancer Immunol Immunother

      巻: 70 ページ: 945-957

    • DOI

      10.1007/s00262-020-02737-y. Epub 2020 Oct 19.

    • 査読あり
  • [学会発表] Histopathological and mass cytometry analyses of tumor microenvironments after a novel neoadjuvant peptide vaccination therapy for resectable HCC.2021

    • 著者名/発表者名
      Nakajima M, Hazama S, Nakagami Y, Tamada K, Udaka K, Sakamoto M, Kato N, Akinaga S, Saito A,Adachi K, Matsui H, Matsukuma S, Shindo Y, Tokumitsu Y, Iida M, Tsunedomi R, Suzuki N, Doi S, Ioka T, Nagano H.
    • 学会等名
      第33回肝胆膵外科学会
  • [学会発表] 肝細胞癌に対する新規がんワクチン療法による腫瘍微小環境の改変と複合免疫療法の提案2021

    • 著者名/発表者名
      中島正夫、硲 彰一、松井洋人、新藤芳太郎、松隈 聰、徳光幸生、中上裕有樹、恒富亮一、土肥俊、玉田耕治、宇高恵子、坂元亨宇、加藤直也、秋永史郎、齋藤 彰、飯田通久、鈴木伸明、武田 茂、井岡達也、永野浩昭
    • 学会等名
      第57回肝癌研究会
  • [学会発表] 肝細胞癌に対する新規がんワクチン療法による腫瘍微小環境の改変と複合免疫療法の提案2021

    • 著者名/発表者名
      中島正夫、硲 彰一、徳光幸生、新藤芳太郎、松井洋人、松隈 聰、中上裕有樹、恒富亮一、玉田耕治、宇高恵子、坂元亨宇、加藤直也、齋藤 彰、土肥俊、吉田 晋、飯田通久、鈴木伸明、武田 茂、井岡達也、永野浩昭
    • 学会等名
      第34回バイオセラピィ学会

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公開日: 2022-12-28  

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