研究課題
本研究の目的は、肝細胞癌(HCC)に対する術前・術後補助免疫療法としてのHSP70由来ペプチド+GPC3由来ペプチドと新規免疫アジュバンドであるsLAG3-IgとPoly-ICLCを用いたがんワクチン療法を行った患者由来の切除腫瘍組織を用いて、それらに含まれるリンパ球の機能を解析することである。20名のHCC患者に対して術前に6回ワクチンを投与し、その後根治切除術を行った。ワクチン投与後の切除検体について、免疫組織学的(CD8、PD-1、HSP70、GPC3)検査を実施した。さらに、腫瘍切除検体から抽出した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のフェノタイプをマスサイトメトリー(CyTOF)を用いて解析した。また、前治療を行わず切除を施行した20例のHCC患者を対照群として、同様の解析を行い比較した。免疫組織学的解析により、ワクチン投与群の20例中12例でCD8+細胞の高浸潤(≧300cells/mm2)が観察され、対照群では7例で確認された。ワクチン群でCD8+細胞の高浸潤が認められたほぼ全例で、CD8+細胞の浸潤部位に一致するPD-1+細胞が存在した。一方、対照群では同様の症例は4例のみであった。TILのCyTOF解析において、対照群と比較してワクチン群では、CD8+PD-1+T細胞において抗原特異的T細胞マーカー(CD39)を発現する割合が高かった。さらに、CD39+PD-1+CD8+T細胞中で脱顆粒マーカーであるCD107aを高発現し、疲弊マーカーであるTIM3の発現が低い、真に活性化したCD8+TILをワクチン群では3例認めたが、対照群では1例も認められなかった。本ワクチン療法は、腫瘍微小環境を改善し、免疫原性の低いcold HCCの一部をHotに変換する可能性がある。このことから、本治療法が、ICIの治療限界を克服する新たな治療戦略となる可能性が示唆された。
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Hepatol Res .
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10.1111/hepr.13900.