膵癌は難治性悪性疾患のひとつであり根治切除後も再発率が高く、近年、様々な癌種に対して目覚ましい効果が報告されている免疫チェックポイント阻害剤も膵癌に対する有効性は乏しい。それらの原因として膵癌微小環境における抑制性免疫が挙げられる。膵癌微小環境を解明するべく我々は、免疫療法を施行した膵癌切除症例の腫瘍組織のRNAシークエンスを行ったところ、予後不良群で腫瘍の解糖系に関与する遺伝子群が有意に高発現していた。そこで我々は、これらの膵癌における解糖系関連遺伝子群の中から免疫抑制に関連する因子としてIL13受容体αサブユニット(IL13Ra)に着目し、膵癌の予後不良バイオマーカーとなりうるかを検証することとした。 当初は免疫療法施行群に対する免疫染色を行う予定であったが、症例がいずれも古くパラフィンブロックの状態があまりよくないため、正確な免疫染色による評価が疑問視された。 そのため、以前より教室では癌幹細胞に関与すると思われる分子:Calreticulinに注目してきたが、このようなCalreticulin高発現膵癌細胞における免疫逃避機構との関連を検証した。その結果、Calreticulin高発現細胞株においてPDL1発現が高くHLA-class1発現が低いことが示され細胞表面にCalreticulinを高発現した膵癌幹細胞様細胞は免疫監視からの逃避と関与している可能性があると考えられた。
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