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2021 年度 実施状況報告書

消化器がんに対する免疫応答における好中球細胞外トラップの意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K17629
研究機関自治医科大学

研究代表者

佐田友 藍  自治医科大学, 医学部, 助教 (40528585)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード好中球細胞外トラップ / マクロファージ / T細胞 / ケモタキシス / CXCL-11 / 細胞運動 / 免疫チェックポイント分子
研究実績の概要

1.健常人末梢血から単核細胞(PBMC)を採取、CD14ビーズを用いて単球を分離し、M-CSF (50 ng/ml)を添加した培地で5 日間培養する実験系に、好中球をPMA(1microM)またはLPS(10microg/ ml)で15分間刺激し、十分に洗浄し、さらに4時間インキュベートしNETsを加えると、M2型マクロファージへの分化が促進される傾向を認めた。

2.活性化T細胞の遊走に与えるNETsの影響:末梢血PBMCを抗CD3抗体とr-IL-2(10ng/ml)で刺激し、活性化T細胞を得た。このT細胞を3ミクロンのporeを有するインサートに静置し、下層にCXCL-11(1000ng / ml)を含んだ培養液を添加、2時間後に下層に遊走した細胞数を検討したところ、T細胞の遊走はPMA活性化好中球の存在下で劇的に減少した。この現象はDNase IによるNETsの分解や、遠心分離によってNETs成分を除去しても変わらなかったが、カタラーゼ(800u / ml)で前処理すると減弱した。また、活性化T細胞ののrandom migrationをタイムラプス動画で観察すると、PMA刺激好中球の上清の添加で劇的に抑制された。T細胞の遊走はLPS活性化好中球によっても有意に阻害されたが、NETsを除去するとその抑制は部分的に解除された。また、Western blotにてCXCL-11はLPS刺激好中球由来のNETsによって完全に分解されたが、DNAseIやプロテアーゼ阻害剤であるPMSFが共存でその抑制は解除阻害された。

3.C57/BL6マウスに同種胃癌細胞YTN16を腹腔内投与し腹膜播種を形成させる実験系を作成し、抗PD-1抗体に投与が有効であることを確認した。また、活性化好中球由来のNETsを共投与すると腹膜播種の形成が促進されることを確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

In vitro実験により、「NETsはマクロファージの分化を制御し、Tリンパ球の遊走に対して抑制的な作用を持つ」という本研究の仮説の正当性を示唆するデータが得られた。一方、PMAとLPSで刺激した好中球由来のNETsでは、T細胞の運動能に対する影響が若干異なっている事実がわかり、好中球はいくつかのメカニズムを介してT細胞の浸潤に影響を与えている新規知見が得られた。また、同種の胃癌細胞による腹膜播種の動物モデルにてPD-1抗体の作用を確認することができ、今年度以降の免疫チェックポイント阻害薬の奏効にNETsがどんな影響を与えるかを検討できる基盤となる実験系が確立できた。

今後の研究の推進方策

C57/BL6マウスに同種胃癌細胞YTN16と活性化好中球由来のNETsを腹腔内に共投与し腹膜播種を形成させる実験系にて、抗PD-1抗体 (200microg/mouse)を3日毎に投与し、その治療効果をNETs非存在下の治療効果と比較検討する。さらに、DNAse 1 (2000u/mouse)あるいはPAD阻害薬Cl-Amidine (50mg/Kg)をそれぞれ腹腔内、皮下に連日投与し、抗PD-1抗体の奏効性の変化を検討する。さらに、それぞれの動物においてPD-1抗体治療後の組織切片を作成、Cit-H3抗体でNETsの存在確認を行うとともに、腫瘍に浸潤した免疫細胞の種類や密度を、CD3, CD4, CD8, CD19などのリンパ球亜群、F4/80, CD11b, Gr-1に対するモノクロナル抗体を用いて染色し、NETsの存在が腫瘍の免疫学的がん微小環境に与える影響を明らかにする。

単球の分化と走化性に関するin vitroの実験を追加し、その分子機序を明らかにする。また、PMAとLPSの刺激によるNETsは活性化T細胞の運動に対して抑制的な作用を持つが、この現象には活性酸素(ROS)やケモカインの分解などの異なる機序が関わっていることが示唆されたため、そのメカニズムについてより詳細に検討を加える。

胃癌、大腸癌、卵巣癌の切除標本にて、CD66b抗体、シトルリン化ヒストン(Cit-H3)抗体を用いて、好中球とNETを定量するとともに、CD4,CD8, CD68, CD163に対する抗体でも染色し、NETsとT細胞やM2マクロファージの浸潤様式、臨床病理学的因子との関連性を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

In vitroおよびin vivoの実験に関しては、概ね予定通りに実施することができた。発表を予定していた学会はオンライン開催となったため、旅費は執行していない。前年度の残額については、必要な消耗品費として使用予定である。ヒト検体を用いた免疫染色では、多少試行錯誤を要したが、その結果至適条件が決定できたので、今年度に多数のサンプルを用いた検討を行う予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] PMA刺激好中球が癌細胞の遊走能に与える影響2021

    • 著者名/発表者名
      髙橋 和也, 大澤 英之, 金子 勇貴, 田村 昂平, 木村 有希, 齋藤 晶, 東條 峰之, 金子 理人, 佐田友 藍, 宮戸 秀世, 佐田 尚宏,北山 丈二
    • 学会等名
      第80回日本癌学会学術集会
  • [学会発表] 活性化好中球は活性化T細胞の遊走能を抑制する2021

    • 著者名/発表者名
      田村 昂平, 金子 勇貴, 風當 ゆりえ, 髙橋 和也, 木村 有希, 齋藤 晶, 東條 峰之, 金丸 理人, 佐田友 藍, 宮戸 秀世, 大澤 英之, 嵯峨 泰, 竹井 裕二, 藤原 寛行,北山 丈二
    • 学会等名
      第80回日本癌学会学術集会

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公開日: 2022-12-28  

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