研究課題
免疫細胞のひとつであるマクロファージが肝修復には重要な役割を果たしていること、また関与するマクロファージには多様性があることなどが最近明らかにされ、ホットな研究領域となっている。昨年度はマクロファージ多様性に自然免疫細胞であるナチュラルキラー細胞(Natural Killer T、NKT)細胞が関与する可能性を野生型マウスとCD1d欠損マウスとを比較することでみいだした。本年度においては、invariant NKT(iNKT)細胞を特異的に活性化することができるリガンドであるアルファ-ガラクトセラミド(α-GalCer)を用いて検討した。αGalCerまたはPBSを投与したC57BL/6マウスに肝虚血再灌流を施行した。再灌流障害後の肝修復を血液生化学、組織検査などで評価した。また集積するマクロファージの表現形式をフローサイトメトリーで解析した。α-GalCer投与マウスでは、PBS投与マウスと比較して肝逸脱酵素レベル・肝壊死面積の早期改善および肝細胞増殖マーカーであるPCNAの発現の増強を認めた。さらにα-GalCer投与マウスでは肝集積マクロファージのなかで、炎症性マクロファージよりも修復性マクロファージが増加した。またα-GalCer投与マウスではiNKT細胞からのIL-4産生の増加を認めた。そこでα-GalCer投与マウスにIL-4中和抗体を投与し肝虚血再灌流を施行した。IL-4中和抗体投与マウスではコントロールマウスと比較して肝逸脱酵素レベル・肝壊死面積の増加、およびPCNA発現の減少を認め、さらに修復性マクロファージの割合の減少を認めた。これらの結果よりiNKT細胞により産生されるIL-4が炎症性マクロファージから修復性マクロファージへの分化を刺激することで肝虚血再灌流障害の肝修復の促進に関与していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究が、当初に立案した実験計画に沿って、ほぼ順調に遂行されている。肝虚血再灌流障害モデルにおいて肝修復過程にNKT細胞が関連していることを示すことができたからである。
当初の実験計画に沿って、本研究を進めていく。NKT細胞の関与が示唆されたことから、NKT細胞を活性化する糖脂質α-ガラクトシルセラミド (αgalctosyleceramide)を投与して肝修復にもたらす効果を調べる。さらにその制御機構についても明らかにする。
遺伝子解析としてRNAシークエンスによる解析に関連する諸経費を算定していたが、準備が間に合わず来年度に持ち越した。また購入予定であった消耗品の納入が間に合わなかったことから次年度に繰り越した。これらに加え、来年度では実験動物関連と細胞培養関連を中心とした消耗品の補充及び実験動物の購入費に充てる予定である。
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