本研究は、食道癌集学的治療における奏効を、リキッドバイオプシーなどを用いて精度高くモニタリングすることにより、手術回避を含めた低侵襲個別化治療を確立することを目的①としている。さらに、術前化学療法奏効が強力な予後因子であることを踏まえ、その奏効率向上を目指した耐性メカニズムの解明も目的②としている。 食道癌術前化学療法症例における血中Cell free DNAの解析を目的とし、患者検体の集積を開始している。収集された検体の一部は既に解析を開始しており、今後術前化学療法の奏効や、予後との関連について検討を進めていく。すでに解析が終了した数検体の解析においては、食道癌患者に項頻度に認められる遺伝子変異が、血液中にもみられることを確認した。さらに、原発巣の遺伝子変異分布についても、遺伝子パネル検査を用いて解析し、血液所見と照合を進めている。 また、最終的に腫瘍量に基づいて治療戦略を選択していく場合、遺残腫瘍量の把握とあわせてその分布が大変重要である。臨床データを用いて、術前化学療法奏効例における腫瘍遺残状況について検討した。結果として、術前化学療法が奏効した場合、腫瘍は局所にのみ遺残することが明らかとなった。これは、術前化学療法が奏効した場合には、化学放射線療法などにより手術回避が可能となる可能性を示唆していると考え報告した。
目的②:食道癌における多剤併用療法の耐性メカニズムの解明ならびに薬剤耐性株を用いたドラッグスクリーニング) 薬剤耐性株の作成に注力し、食道癌細胞株において、臨床で用いられている薬剤の耐性株の作成が終了した。
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